福岡で事務所をどこに構えるか。町名別データから考える

起業の準備で必ず出てくるのが、事務所をどこに構えるかです。天神や博多駅前がいいのか、自宅で十分なのか。
福岡市の法人82,967社を町名別に集計したところ、判断材料になる数字が出ました。この記事では、家賃をかける意味がある場合とない場合を切り分けます。
- 実際にはどこに本店があるか
- 家賃をかける意味がある場合
- 自宅で始めていい場合
- バーチャルオフィス・シェアオフィスの注意点
- 後から移転するコスト
- 資金計画のなかで決める
- よくある質問
- 立地に払う理由があるかを先に決める
実際にはどこに本店があるか
法人数の多い町は、天神4,329社、博多駅前4,161社、大名2,563社、薬院1,771社——オフィス街に集中しています。
ただし、住宅地の町にもまとまった数があります。大橋776社、井尻525社、高宮479社、野間427社。
そして注目すべきはこちら——2021〜2025年設立の割合が高い町のトップは、香住ヶ丘(64.3%、n=140)、香椎照葉(41.5%、n=591)といった住宅地でした。新しく作られる法人は、住宅地にも相当数あるということです。
全データは福岡市 会社が多い町ランキングに掲載しています。
新設の「割合」が高いのは住宅地、「社数」が多いのはオフィス街。自宅を本店にする起業は、数字に表れている。
家賃をかける意味がある場合
①来客がある。お客様が事務所に来る業種(士業、相談業、サロン、教室)。立地が信用と集客に直結します。
②立地が採用に効く。人を雇う予定があり、通勤しやすさが応募数に影響する場合。
③許認可の要件。業種によって、事務所の要件が定められています。宅建業、人材紹介、建設業など。自宅では要件を満たせないことがあるので、先に確認してください(会社設立の流れ)。
④取引先の与信。BtoBで、住所が判断材料になる業界。
この4つに当てはまらないなら、初期から事務所を借りる理由は弱い。
自宅で始めていい場合
①来客がない(オンライン完結、客先訪問型) ②ひとりで始める(ひとり起業に向く業種) ③許認可の要件がない
この場合、事務所費は最も削りやすい固定費です。創業期は現金が最も貴重なので、削れる固定費は削るのが原則です(開業資金の内訳の作り方・運転資金は何ヶ月分必要か)。
自宅を本店にする場合の確認事項: ①賃貸なら契約上の可否(事業利用を禁じている契約があります)②分譲マンションなら管理規約 ③住所が登記簿で公開される——この3点目は見落とされがちです。
バーチャルオフィス・シェアオフィスの注意点
住所だけを借りる選択肢もあります。天神・博多駅前の住所を、月数千円〜で使えるサービスです。
確認すべきこと:
①法人登記に使えるか。サービスによって可否が違います。
②許認可が取れるか。宅建業、人材紹介、古物商など、独立した事務所スペースを要件とする許認可は、バーチャルオフィスでは取れないことが多い。業種の要件を先に確認してください。
③銀行口座が開けるか。バーチャルオフィスの住所だと、法人口座の審査で不利になることがあります(法人口座の審査)。
④同じ住所に多数の法人がある。取引先が調べたときに分かります。業種によっては印象に影響します。
②と③が実務上の分かれ目です。「住所が借りられる」と「事業が回る」は別です。
後から移転するコスト
本店を移転すると、登記の変更が必要です。登録免許税がかかり、管轄法務局が変わるとさらに増えます。
そして、名刺・ウェブサイト・各種届出の住所変更も発生します。
だから、「とりあえず自宅、軌道に乗ったら移転」は、移転コストを見込んでおく必要があります。
とはいえ、使わない事務所を借り続けるコストのほうが大きいのが普通です。移転コストは一度きり、家賃は毎月だからです。
資金計画のなかで決める
事務所の判断は、単独で決めずに資金計画の中で行ってください。
必要な生活費と、そこから逆算した必要売上を先に出す(ライフプラン)。そのうえで、固定費にいくら割けるかを決める。
融資を受ける場合、事務所費を含めた計画が審査対象になります(創業計画書の書き方・公庫の創業融資)。
「立地がいいほうが売れる」という仮定は、業種によっては成り立ちません。成り立つかどうかを、先に検討してください。
よくある質問
Q. 天神に住所があると信用されますか?
業種によります。BtoCのオンライン事業ではほぼ影響なし、来客型や一部のBtoBでは影響があります。
Q. 自宅の住所は公開されますか?
法人の本店所在地は登記事項で、誰でも閲覧できます。これを避けたい場合が、バーチャルオフィスを使う主な理由の1つです。
Q. 福岡はどこが起業しやすいですか?
場所より、支援機関へのアクセスが実務的です(スタートアップカフェの使い方・福岡の創業支援制度)。
Q. 会社の形はどう決めますか?
福岡市の新設の27%が合同会社です(福岡で合同会社が増えている実数・福岡市 会社設立データ)。
立地に払う理由があるかを先に決める
福岡の法人はオフィス街に集中していますが、新しく作られる法人は住宅地にも相当数あります。来客・採用・許認可・与信——この4つに当てはまらないなら、初期から事務所を借りる理由は弱い。そしてバーチャルオフィスは、許認可と法人口座の2点を先に確認してください。
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