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ひとり起業に向く業種。在庫なし・固定費なしの原則

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者

ひとりで始めるなら、何の事業がいいのか。ネット上の「おすすめ業種」リストは、たいてい流行りの並びで、自分に当てはまるかが分かりません。

結論から言うと、業種を選ぶ前に、満たすべき原則が3つあります——在庫を持たない、固定費を持たない、人手を前提にしない。この3つを満たす業種の中から、自分の経験と接続するものを選ぶ。順番が逆だと、資金が先に尽きます。この記事では、原則と、成立条件の計算方法を示します。

このコラムでわかること
  1. 3つの原則
  2. 向く業種の型
  3. 向かない(=資金が要る)型
  4. 成立条件を計算する
  5. 業種の選び方——経験との接続
  6. 拡大するときの分岐点
  7. よくある質問
  8. 業種より、構造を選ぶ

3つの原則

①在庫を持たない。在庫は現金が形を変えたものです。売れるまで現金は戻らず、売れ残れば消えます。ひとり事業でもっとも資金を殺すのが在庫です。物販から入るなら、受注生産・受託・仲介の形を検討してください。

②固定費を持たない。事務所、常時稼働の設備、リース。売上ゼロの月に出ていく金額を、できるだけ生活費だけにする。自宅、シェアオフィス、時間貸しから始めます。

③人手を前提にしない。人を雇うと固定費が跳ね、しかも雇用は簡単には解けません。まず外注で回し、継続的な需要が確認できてから雇用を検討する。

この3つを満たす事業は、失敗しても損失が小さい。だから試行回数を稼げます。これが、ひとり起業でもっとも効く設計です。

向く業種の型

原則を満たす事業は、おおむね次の型に収まります。

①役務提供(受託): 制作、設計、執筆、翻訳、開発、コンサルティング、士業、教室・レッスン。在庫ゼロ、固定費ほぼゼロ、自分の時間が原価。もっとも始めやすく、実務経験がそのまま資産になります。

②仲介・代理: 紹介、仲介、代理店。在庫を持たず、成約で報酬を得る形。関係資産がある人に向きます

③運用代行・保守: SNS運用、広告運用、システム保守、記帳代行。継続課金になりやすく、収入が安定します。

④出張型サービス: 出張美容、清掃、修理、訪問指導。店舗を持たずに始められるのが利点。

⑤オンライン販売(無在庫型): 受注生産、デジタル商品、オンライン講座。

向かない(=資金が要る)型

①店舗型(飲食・小売・サロン)。物件取得と内装で数百万円〜、しかも固定費が重い。不可能ではありませんが、ひとりで始める最初の事業としては難易度が高い福岡で飲食店を開業する)。

②在庫型物販。仕入れ資金と売れ残りリスク。

③設備型。機械、車両、専用什器。リースで回避できる場合もあります。

これらを選ぶ場合は、運転資金を厚めに確保することが前提になります(運転資金は何ヶ月分必要か)。

POINT

ひとり起業で選ぶべきは「儲かりそうな業種」ではなく「失敗しても致命傷にならない構造」。構造が軽ければ、業種は後から変えられる。

成立条件を計算する

業種を選んだら、成立するかどうかは掛け算で確認できます。

必要月商 = 生活費 + 事業経費 + 税・社会保険 + 返済。次に、必要月商 ÷ 単価 = 必要件数。そして、必要件数 × 1件あたりの作業時間 ≦ 稼働可能時間 か。

ここで詰まるパターンが2つあります。①単価が低すぎて、必要件数が稼働時間を超える(時間が足りない)。②必要件数を取れるだけの経路がない(営業が足りない)。

①なら単価を上げるか、時間を売らない形(継続課金・成果物型)に移す。②なら経路づくりが先です。この計算を先にやると、「なんとなく良さそう」で始めて詰むのを防げます

業種の選び方——経験との接続

原則を満たす型の中から、自分の実務経験と接続するものを選びます。理由は3つ。学習コストが低い、単価を高く設定できる、そして創業融資の審査で経験年数が評価される。

未経験分野を選ぶ場合は、在職中に副業で検証してから会社員のまま起業する)。福岡は受注先となる中小企業が集積しており、対面での関係構築もしやすい環境です(福岡で起業する)。

拡大するときの分岐点

ひとりで回して、稼働が埋まってきたときの選択肢は3つ。①単価を上げる(もっとも安全)。②外注に出す(品質管理の負荷が増える)。③雇う(固定費が跳ねる)。

順番は①→②→③。いきなり③に行くと、売上が落ちた月に耐えられません。

よくある質問

Q. 資格は必要ですか?

許認可が要る業種以外では、資格より実績のほうが受注に効きます。ただし、資格が信用の代替になる分野(士業、施工、医療系)では意味があります。

Q. 利益率の高い業種を教えてください。

粗利率が高いのは役務提供型ですが、受注できるかどうかは経験と経路次第です。粗利率だけで選ぶと、受注ゼロで終わります。

Q. 開業資金はいくら要りますか?

役務提供型なら数十万円から可能です。ただし生活防衛資金は別に必要です(起業資金はいくら必要か)。

Q. ひとりで営業から実務まで回せますか?

最初は回ります。埋まってきたら、営業か実務のどちらかを外に出すのが次の一手です。

Q. ひとりで始めるなら、会社の形はどうしますか?

取引先が法人格を求めないなら、個人事業のままで足ります。法人にする場合、福岡市の新設法人の27.3%は合同会社で、ひとり社長の選択として定着しました(福岡市 会社設立データ)。役員の任期がなく重任登記も不要なぶん、維持コストが軽い。判断の前に、必要な売上を生活費から逆算しておいてください(ライフプラン)。

業種より、構造を選ぶ

ひとり起業で失敗する典型は、業種選びを間違えたからではなく、在庫と固定費を抱えたからです。逆に、軽い構造で始めれば、業種が合わなくても方向転換できます。最初に選ぶべきは業種ではなく、やり直せる構造のほうです。

自分の経験だと、どの型が合いそうか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。

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