創業計画書の書き方。審査担当者が見る数字の整合性

創業計画書のテンプレートは公庫のサイトからダウンロードできます。項目も決まっています。それでも多くの人がここで止まるのは、書く欄は分かっても、何を書けば通るのかが分からないからです。
結論から言うと、審査担当者が見ているのは文章の熱意ではなく、数字どうしが矛盾していないかです。売上・費用・借入・返済・生活費——この5つが一本の線でつながっていれば計画は通り、どこかが独立して動いていれば疑われます。この記事では、各欄の書き方ではなく「数字を通す」という観点から、計画書の組み立て方を解説します。
- 計画書は「作文」ではなく「連立方程式」
- 売上は「式」で書く
- 費用は「漏れ」で落ちる
- 返済原資を明示する
- 審査担当者が矛盾を見つける典型パターン
- よくある質問
- 計画書は、借りるためだけの書類ではない
計画書は「作文」ではなく「連立方程式」
まず考え方から。計画書の各項目はバラバラの欄ではなく、相互に縛り合う関係にあります。
売上が決まれば必要な仕入れが決まる。仕入れが決まれば運転資金が決まる。運転資金が決まれば借入額が決まる。借入額が決まれば毎月の返済額が決まる。返済額は利益から出るので、利益がその額を上回っていなければならない——ぐるりと一周して整合するか。ここが審査の中心です。
だから、書く順番も決まっています。動機や経歴から書き始めると、後半の数字を辻褄合わせで作ることになります。先に売上を組み、費用を積み、そこから借入額を逆算する。文章の欄は最後で構いません。
売上は「式」で書く
最重要項目です。ここを一つの数字(月商150万円)で書くと、根拠を問われて終わります。必ず分解した式で書いてください。
対面商売なら「客単価 × 1日の客数 × 営業日数」。受注業なら「単価 × 月間件数」。継続課金なら「単価 × 契約数 × 継続率」。式にすると、各変数の根拠を個別に説明できます。客単価は近隣の同業と自分のメニュー構成から、客数は席数と回転率から、営業日数はカレンダーから——変数ごとに根拠を持てば、合計値は自動的に根拠を持ちます。
そのうえで、軌道に乗った月と、開業直後の月を分けて書く。開業初月から満席想定の計画は、それだけで信頼度を落とします。実務的には、初月は目標の5〜6割、数ヶ月かけて目標水準へ——という立ち上がりの絵を描くほうが評価されます。
福岡の相場感が必要なら、福岡の平均年収と生活コストや福岡の生活費が単価設定の参考になります。地域の可処分所得と乖離した単価設定は、根拠を厚くしないと通りません。
費用は「漏れ」で落ちる
費用の欄で落ちるのは、金額が大きすぎるからではなく、項目が抜けているからです。担当者は日常的に同業種の計画を見ているので、あるべき費用が無い計画はすぐ分かります。
見落とされがちな項目を挙げます。社会保険料(法人なら会社負担分)、自分の役員報酬または生活費、開業後の広告費(初期だけ計上して以降ゼロになっている計画が多い)、消耗品・修繕、税金(消費税を預り金と認識していない計画は危険)、保証料や手数料。
特に自分の生活費の扱いは要注意です。個人事業なら事業の利益から生活費を出すため、利益=生活費+返済原資でなければ回りません。法人でも役員報酬を計上しなければ、生活が成り立たない計画になります。生活費を計上して赤字になる計画は、そもそも借入額か事業モデルを見直すべきサインです。
費用は「多めに、漏れなく」。売上は「控えめに、分解して」。この非対称が計画書の作法。逆をやると、数字は大きいのに信用されない計画になる。
返済原資を明示する
借入の欄で問われるのは「いくら借りたいか」ではなく「どこから返すのか」です。返済原資は原則、税引後利益+減価償却費。ここが毎月の返済額を上回っている必要があります。
計算例で言えば、月次の税引後利益が15万円、減価償却が5万円なら、返済原資は月20万円。毎月の返済が18万円なら成立しますが、余裕は2万円しかありません。売上が計画の8割になった瞬間に破綻する計画です。この余裕度(返済比率)を自分で確認しておくと、面談での「計画どおりにいかなかったら」という質問にも答えられます(面談で聞かれること)。
返済期間を長めに取れば毎月の返済は軽くなります。総支払利息は増えますが、創業期に効くのは月々のキャッシュアウトです。ここは遠慮せず、長めの設定を相談してください。
審査担当者が矛盾を見つける典型パターン
現場でよく指摘される矛盾を挙げておきます。自分の計画書を見直すチェックリストとして使えます。
設備投資と売上規模が合っていない。席数20の設備で月商600万円の計画、など。仕入率が業界水準から外れている。原価率が異様に低い計画は、仕入れの見落としを疑われます。人件費とオペレーションが噛み合わない。一人で回せない営業時間が組まれている。運転資金の根拠がない。「運転資金300万円」とだけ書かれ、内訳が無い(運転資金は何ヶ月分必要か)。自己資金と通帳が一致しない(自己資金の見られ方)。
いずれも、数字どうしの関係を見れば分かる矛盾です。逆に言えば、自分で一周チェックすれば潰せます。
よくある質問
Q. 手書きとパソコン、どちらがいいですか?
どちらでも評価は変わりません。読みやすさを優先してください。別紙で補足資料(売上の分解表、見積書のまとめ)を付けるのは有効です。
Q. 専門家に作ってもらってもいいですか?
作成の支援を受けるのは一般的です。ただし面談で本人が説明できることが前提です。作ってもらった数字の根拠を自分が言えないなら、その計画書は自分のものになっていません。
Q. どのくらいの分量が適切ですか?
所定の様式に収まる範囲で十分です。分量より、売上の分解と費用の網羅性。補足したい根拠は別紙で足してください。
Q. 開業後に計画とズレたらどうなりますか?
ズレること自体は前提です。問題になるのは資金使途の違反(設備資金で別のものを買う等)で、これは次の融資への道を閉ざします。計画とのズレは報告・相談で扱い、使途は申請どおりに。
計画書は、借りるためだけの書類ではない
創業計画書を真面目に作ると、事業のどこが弱いかが自分で分かります。売上が特定の1社に依存している、固定費が重すぎる、自分が倒れたら止まる——数字にすると見えます。融資に落ちても、この計画書は残ります。
自分の計画書のどこが突かれるか、数字は一周しているか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。書きかけの計画書を持ってきてもらえれば、そこから一緒に整えます。

「起業は特別な人のものではありません。準備の仕方から話しましょう。」
久保に相談する(無料)