12月に開業した年の確定申告。1か月分でも申告は要るか、青色申告は間に合うか

11月末で会社を辞めて、12月から個人事業を始める。年末に開業すると、最初に迷うのは「1か月しか営業していない年も確定申告するのか」「青色申告はもう間に合わないのではないか」の2点です。
結論から言うと、12月に開業しても、12月分の売上と経費はその年の事業所得になり、開業した年の分から確定申告の対象になりえます。申告するのは翌年2月16日から3月15日まで(原則)です。そして青色申告は間に合います。1月16日以後に開業した場合、青色申告承認申請書の期限は開業日から2か月以内なので、12月開業なら翌年2月ごろまでに出せば、開業した年の分から青色申告ができます。この記事では、年末に開業した年の論点を、国税庁の案内で確かめられる範囲で整理します。
- 開業した年の分から、確定申告の対象になる
- 開業届と青色申告承認申請書の期限
- 12月開業で起きること:1か月分の申告と開業費
- 会社員から独立した年は、給与と合わせて申告する
- 12月開業のやることを時系列で
- よくある質問
- 12月開業は「2月の期限」と「3月の期限」を分けて覚える
開業した年の分から、確定申告の対象になる
所得税の確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得を計算して確定させる手続きです。開業してから年末までの売上と経費は、その年の事業所得として計算します。
申告が必要かどうかは、営業した月数ではなく金額で決まります。国税庁の説明では、その年の所得金額の合計が所得控除の合計を超え、その超える額に対する税額が配当控除などの額を上回る人は、確定申告をする必要があります。1か月分でも利益が大きければ申告が必要で、利益が小さく、ほかに所得もなければ、申告義務が生じないこともあります。
ただし、義務がない場合でも、申告しておく意味がある場面があります。
①青色申告特別控除を使いたいとき。控除額の大きい区分は、複式簿記で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付した確定申告書を、期限(翌年3月15日)までに提出することが要件です。
②赤字を翌年以降に回したいとき。青色申告者は、事業所得などの赤字を損益通算しても引ききれない部分(純損失)を、翌年以後3年間にわたって繰り越せます。繰り越すときは、損失申告用の申告書第四表を使います。
③会社員時代の給与があるとき。年の途中で退職して年末調整を受けていなければ、源泉徴収された税金が納め過ぎになっていることがあり、確定申告で精算します(後述)。
期限に遅れると期限後申告となり、内容によっては納める税金のほかに無申告加算税がかかります。
年末の開業は珍しいことではありません。当サイトの集計では、福岡市に本店を置く法人を設立月で数えると、2016年以降の累計で12月設立は2,398社。最多の1月(2,828社)、最少の7月(2,252社)と比べても大きな偏りはありません(福岡市 会社設立データ)。これは法人の数で、個人事業の開業は含みません。
開業届と青色申告承認申請書の期限
12月開業で混乱しやすいのは、2つの書類の期限の決まり方が違うことです。
| 書類 | 国税庁の案内による提出期限 | 12月に開業した場合 |
|---|---|---|
| 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届) | 事業を開始した日の属する年分の確定申告期限まで | 翌年3月15日(原則) |
| 所得税の青色申告承認申請書 | 原則はその年の3月15日まで。1月16日以後に開業した場合は開業日から2か月以内 | 開業日の2か月後(翌年2月ごろ) |
開業届は、開業した年分の確定申告期限までに、納税地を所轄する税務署へ提出します。12月開業なら、期限は翌年の確定申告と同じ3月15日です(土日祝日に当たる場合は翌日)。e-Taxのほか、書面を持参または送付して出すこともできます(書き方は開業届の書き方、出さなかった場合の扱いは開業届を出さないとどうなるか)。
青色申告承認申請書は、1月16日以後に新たに事業を始めた場合、事業開始の日から2か月以内が期限です。たとえば12月10日に開業したなら、期限は翌年2月10日です(土日祝日に当たる場合は翌日)。
ここに落とし穴があります。開業届の期限が3月15日なので、「青色の申請も確定申告と一緒に出せばいい」と考えると、青色の期限を過ぎてしまいます。12月開業では、青色申告承認申請書の期限のほうが先に来ます。開業届と同時に出しておくのが確実です(要件と効果は青色申告のメリット)。
承認の通知についても、12月開業には専用のルールがあります。国税庁の手続案内では、その年の11月1日以降に新たに業務を開始した場合、翌年2月15日までに処分の通知がなければ、承認されたものとみなされます。通知が来ないまま年を越しても、それだけで心配する必要はありません。
12月開業で起きること:1か月分の申告と開業費
1か月しかない年ならではの論点が3つあります。
①経費は「支払った年」ではなく「債務が確定した年」で決まる。必要経費になるのは、その年に債務が確定した金額です。12月31日までに債務が成立し、具体的な給付の原因となる事実が発生し、金額を合理的に計算できる状態なら、支払いが翌年1月でも開業した年の経費になります。逆に、12月に支払ったものでも、その年に債務が確定していなければ、その年の経費にはなりません。
②12月に使い始めた資産は、その年は1か月分しか経費にならない。パソコンや車など減価償却の対象になる資産は、「本年中に事業に使用していた月数」で按分して減価償却費を計算します。12月から事業に使った資産なら、開業した年に経費になるのは12か月のうち1か月分です。なお、使用可能期間が1年未満のものや少額のものなどは、事業に使い始めた年に全額を経費にする扱いもあります。
③開業前に使った費用は「開業費」として扱える。開業費は、事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用で、国税庁の手引きでは、開業準備のための広告宣伝費や、開業までの給料賃金などが例に挙がっています。開業費は繰延資産として扱います。
開業費の償却は、60か月の均等償却か、任意償却のどちらかの方法によります。国税庁の質疑応答事例では、任意償却には下限がないため、支出した年に全額償却してもよく、全く償却しなくてもよいとされています。未償却の残高は、いつでも償却費として必要経費にできます。
12月開業でこれが効くのは、開業した年の売上が1か月分しかないからです。開業費を開業した年に全額経費にすれば赤字になりやすく、翌年以降に回せば、売上が立った年の利益と相殺できます。どちらも選べます。ただし、支出した開業費の内容と、その金額を過去の年分で経費にしていないことを明らかにしておく必要があります。開業前の領収書と、何のための支出かのメモは残しておいてください。
開業費に当たらないものもあります。資産の取得に充てた費用は繰延資産の範囲から除かれ、減価償却の対象になります(②)。また、開業を予定している人に限らない一般向けの研修の費用について、開業準備のために「特別に」支出した費用とは認められず開業費に当たらないとされた裁決例が、税務大学校の講演録で取り上げられています。費目の洗い出しは開業資金の内訳の作り方が参考になります。
会社員から独立した年は、給与と合わせて申告する
11月末で退職して12月に開業した場合、その年は給与所得と事業所得の両方がある年になります。
会社員の税金は、毎月の給与から概算で源泉徴収され、年末調整で過不足を精算します。ところが、年の途中で退職して再就職しない場合は年末調整を受けられません。そのため、源泉徴収された税金が納め過ぎになっていることがあります。
確定申告は、1年間の所得を計算して、源泉徴収された税金などの過不足を精算する手続きです。開業した年は、退職した会社の給与と、12月分の事業所得を、同じ確定申告書で計算します。退職した会社から受け取る源泉徴収票を手元に用意しておきます(転職先への源泉徴収票の提出・転職した年の年末調整)。
注意したいのは期限です。国税庁は、中途退職で年末調整を受けていない人の還付申告は、翌年1月1日から5年間提出できると案内しています。しかし、青色申告特別控除の控除額の大きい区分を受けるには、還付申告であっても、翌年3月15日までに申告書を提出する必要があります。事業所得がある年は、還付申告の5年と青色の期限を混同しないことです。
会社員のまま12月に副業として開業した場合は、給与は勤務先の年末調整で精算されます。そのうえで、給与を1か所から受けていて給与・退職所得以外の所得の合計が20万円を超えるなど、国税庁が示す条件に当てはまれば確定申告が必要です(副業の確定申告)。
12月開業のやることを時系列で
| 時期 | やること |
|---|---|
| 開業前 | 開業準備の支出の領収書を保管し、用途を記録する(開業費の根拠になる) |
| 開業日〜12月中 | 開業届と青色申告承認申請書を作成し、同時に提出する。開業時から消費税の課税事業者やインボイス発行事業者になる場合は、その届出も検討する |
| 12月31日 | 帳簿を締め、12月分の売上と経費(債務確定の基準)を確定させる |
| 開業日の2か月後(翌年2月ごろ) | 青色申告承認申請書の提出期限 |
| 翌年2月15日 | この日までに通知がなければ、青色申告は承認されたものとみなされる |
| 翌年2月16日〜3月15日 | 確定申告。開業届の期限もこの3月15日 |
消費税は、国税庁の案内では、新規開業した年とその翌年は原則として免税事業者になります。一方で、開業時から課税事業者を選ぶ場合や、開業時からインボイス発行事業者の登録を受けたい場合は、開業した年の12月31日までに届出が必要です。12月開業では、この期限が開業と同じ月に来ます。これらを提出すると、開業後2年間は課税事業者として消費税の申告が必要になります。取引先がインボイスを求めるかどうかを先に確かめてから決めてください(個人事業主はインボイス登録すべきか)。
なお、税務署は12月29日から1月3日まで執務を行っていません。窓口で出すなら年内の開庁日に済ませます。
開業前後の手続き全体は個人事業主の始め方にまとめています。
よくある質問
Q. 12月に開業して売上がほとんどない場合も、確定申告は必要ですか?
申告義務は金額で判断します。その年の所得の合計が所得控除の合計を超えず、税額が生じなければ、申告義務が生じないこともあります。ただし、青色申告特別控除の控除額の大きい区分を受ける場合や、赤字を翌年以降に繰り越したい場合は、期限内に申告します。
Q. 青色申告承認申請書が開業日から2か月以内に間に合わなかったら?
開業した年は白色申告になります。翌年分から青色申告にするには、原則どおり翌年の3月15日までに申請書を出します。12月開業で2月の期限を逃しても、3月15日までに出せば翌年分には間に合います。
Q. 開業前に買ったパソコンは開業費になりますか?
資産の取得に充てた費用は開業費(繰延資産)には含まれず、資産として扱います。減価償却の対象になる資産なら、減価償却費は事業に使った月数で按分するため、12月から使い始めた場合、開業した年に経費になるのは1か月分です。少額のものなどは、事業に使い始めた年に全額を経費にする扱いもあります。
Q. 退職した年の還付申告は5年以内でいいと聞きました。
給与だけの還付申告ならその案内どおりです。ただし、事業所得がある年は、税額が生じれば申告期限は翌年3月15日です。青色申告特別控除の控除額の大きい区分は、還付申告であっても3月15日までの提出が要件になっています。
12月開業は「2月の期限」と「3月の期限」を分けて覚える
12月に開業した年の確定申告は、1か月分の事業所得の申告です。量は少なくても、期限は3つあります。
①12月31日: 開業時から課税事業者・インボイス発行事業者になる場合の届出。
②開業日の2か月後(翌年2月ごろ): 青色申告承認申請書。
③翌年3月15日: 開業届と、開業した年の確定申告。
そして、開業前の支出は開業費として記録を残し、いつ経費にするかを自分で選べるようにしておく。この4点を押さえておけば、年末の開業でも最初の申告で慌てずに済みます。
迷ったら、税務署の相談窓口で手続きを確かめる方法もあります。開業後の進め方そのものを考えたいなら、福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。
- 国税庁「タックスアンサー No.2020 確定申告」
- 国税庁「タックスアンサー No.2090 新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 国税庁「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁「タックスアンサー No.2070 青色申告制度」
- 国税庁「タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除」
- 国税庁「タックスアンサー No.2210 必要経費の知識」
- 国税庁「令和7年分 青色申告の決算の手引き(現金主義用)」
- 国税庁 質疑応答事例「償却期間経過後における開業費の任意償却」
- 税務大学校「税大ジャーナル 2024.3 講演録 リスキリング、副業、起業の際の所得課税上の留意点」
- 国税庁「タックスアンサー No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき」
- 国税庁「タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」
- 国税庁「タックスアンサー No.2024 確定申告を忘れたとき」
- 国税庁「開業する場合」
- 国税庁「暮らしの税情報(令和8年度版) 個人で事業を始めたとき/法人を設立したとき」

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