九州の大企業はどこにあるのか。福岡以外の県に本社を置く大企業は各7〜20社、大企業で働く人の9割以上は支社・工場・店舗

「地元に残りたい。でも、大きな会社で安定して働きたい」。九州の福岡以外の県で働く人や、福岡から地元に戻ることを考えている人にとって、これは切実な問いです。地元に大企業はあるのか。あるとしたら、どこで働けるのか。
結論から言うと、福岡以外の6県に本社を置く大企業(従業員1000人以上の会社)は、各県7〜20社しかありません。一方で、大企業で働く人は各県に6万〜13万人いて、そのうち9割以上は本社ではなく、支社・工場・店舗で働いています。地元で大企業に勤める道の多くは、「地元の本社」ではなく「地元にある大企業の拠点」です。この記事では、総務省の経済センサス(2024年6月時点)と各社の有価証券報告書から、九州の大企業の分布と、地元で働ける大企業の実際を整理します。
- 本社がある大企業は、福岡以外では各県7〜20社
- 大企業で働く人の9割以上は、本社以外で働いている
- 県外に本社がある会社の工場が、地元の大きな働き口になっている
- 本社が地元にある上場企業。最大の受け皿は地方銀行
- 福岡に本社がある会社の拠点も、隣県では大きい
- 地元で大企業に勤める道を選ぶ手順
- よくある質問
- 本社の数ではなく、拠点で探す
本社がある大企業は、福岡以外では各県7〜20社
まず、各県に本社がある大企業の数です。ここでの「大企業」は、会社全体の常用雇用者(全国の合計)が1000人以上の会社を指します。上場しているかどうかは問いません。
| 県 | 本社がある大企業 | 大企業で働く人の割合 | うち本社以外で働く人 | 本社がある上場企業 |
|---|---|---|---|---|
| 福岡 | 131社 | 32.4% | 90.0% | 約90社 |
| 大分 | 20社 | 26.5% | 92.6% | 9社 |
| 熊本 | 19社 | 27.2% | 90.9% | 5社 |
| 鹿児島 | 16社 | 24.6% | 97.3% | 11社 |
| 長崎 | 8社 | 26.4% | 93.5% | 2社 |
| 宮崎 | 8社 | 21.3% | 97.1% | 7社 |
| 佐賀 | 7社 | 27.8% | 95.1% | 5社 |
| 参考: 全国 | 3,906社 | 34.0% | 84.3% | — |
(本社・大企業の数字は経済センサス‐基礎調査 2024年6月時点の会社の事業所で集計。「大企業で働く人の割合」は、県内の会社の事業所で働く人のうち、1000人以上の会社の事業所で働く人の割合。上場企業はEDINETに登録された本店所在地で数えた値で、大分は9月29日上場予定のクラサスケミカルを含めると10社)
福岡には大企業の本社が131社ありますが、他の6県は7〜20社です。大分・熊本・鹿児島がやや多く、長崎・宮崎・佐賀は1桁にとどまります。
ところが、大企業で働く人の割合は、どの県も2〜3割あるのです。宮崎の21.3%から佐賀の27.8%まで、福岡の32.4%とそれほど大きな差はありません。本社は少なくても、大企業で働く人はいます。その理由が、表の右から2列目です。
大企業で働く人の9割以上は、本社以外で働いている
福岡以外の6県では、大企業で働く人のうち90.9〜97.3%が、本社ではない事業所で働いています。鹿児島と宮崎は97%を超えます。本社そのものの事務所で働く人は、ごく一部です。
「本社以外の事業所」には、県外に本社がある会社の支社・支店・営業所・工場・店舗と、県内に本社がある会社の本社以外の拠点の両方が入ります。つまり、地元で大企業に勤めている人の多くは、県外の大企業の工場や支店で働く人か、地元企業の支店・営業所で働く人です。
働く側にとってこれは、次の2つを意味します。
第一に、大企業に入る入口は「本社採用」だけではないということ。工場や支店の地域採用、店舗の正社員採用など、拠点ごとの採用が地元で大企業に勤める主な道になります。
第二に、拠点で働く場合、会社の判断で拠点ごと縮小・移転することがあるということ。本社がある会社と違い、その県にいる理由は会社の事業の都合です。長く働くつもりなら、その拠点が会社にとってどういう役割か(主力工場か、営業の出先か)を知っておく価値があります。
県外に本社がある会社の工場が、地元の大きな働き口になっている
では、どんな拠点が多いのか。福岡以外の県で目立つのは製造業、つまり県外に本社がある会社の工場です。
| 県 | 製造業で働く人の割合 | 製造業のうち県外本社の事業所で働く人 | うち東京本社 |
|---|---|---|---|
| 佐賀 | 19.1% | 39.3% | 16.7% |
| 大分 | 14.3% | 29.5% | 12.5% |
| 宮崎 | 14.3% | 26.1% | 7.0% |
| 熊本 | 14.2% | 30.4% | 14.9% |
| 鹿児島 | 12.8% | 30.9% | 4.1% |
| 長崎 | 12.1% | 27.8% | 12.9% |
| 福岡 | 10.9% | 23.9% | 11.5% |
(経済センサス‐基礎調査 2024年6月時点、民営事業所の従業者。「製造業で働く人の割合」は県内の民営事業所で働く人に占める割合)
福岡以外の6県は、どこも働く人に占める製造業の割合が福岡より高く、しかもその製造業で働く人の26〜39%は、県外に本社がある会社の事業所で働いています。佐賀では、製造業で働く人の約4割が県外本社の工場などで働いています。
各県の公表資料には、こうした工場として次のような名前が挙がっています。長崎ではソニーの半導体工場や三菱重工の長崎造船所、大分ではダイハツ九州やソニーの半導体工場、鹿児島では京セラ国分工場やソニーの半導体工場、宮崎では旭化成(延岡)などです。熊本の半導体工場(JASM)については熊本と福岡の比較で扱っています。
こうした工場では、製造の現場だけでなく、生産技術・品質保証・設備保全・総務などの職種も地元で採用していることが多くあります。「地元で大企業の正社員として働く」なら、まず工場の採用を見るのが現実的な入口です。
本社が地元にある上場企業。最大の受け皿は地方銀行
地元に本社がある会社で働きたい場合、候補になるのは地元の上場企業です。福岡以外の6県で、単体の従業員が多い上場企業(持株会社の場合は傘下の中核会社)を並べると、次のとおりです。
| 県 | 会社 | 業種 | 従業員(単体) | 平均年齢 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鹿児島 | 鹿児島銀行(九州フィナンシャルグループ) | 銀行 | 2,051人 | 37.9歳 | 約680万円 |
| 熊本 | 肥後銀行(九州フィナンシャルグループ) | 銀行 | 2,042人 | 39.8歳 | 約726万円 |
| 大分 | 大分銀行 | 銀行 | 1,495人 | 39.5歳 | 約708万円 |
| 宮崎 | 宮崎銀行 | 銀行 | 1,248人 | 38.5歳 | 約661万円 |
| 熊本 | 平田機工 | 機械 | 1,225人 | 39.7歳 | 約736万円 |
| 佐賀 | 佐賀銀行 | 銀行 | 1,129人 | 40.2歳 | 約644万円 |
| 鹿児島 | 新日本科学 | 医薬品の受託研究 | 1,126人 | 38.5歳 | 約670万円 |
| 宮崎 | 旭有機材 | 化学 | 899人 | 42.1歳 | 約683万円 |
| 鹿児島 | アクシーズ | 食品(鶏肉) | 858人 | 43.8歳 | 約512万円 |
| 鹿児島 | 南日本銀行 | 銀行 | 599人 | 38.5歳 | 約620万円 |
| 熊本 | ヤマックス | コンクリート製品 | 543人 | 43.3歳 | 約596万円 |
| 佐賀 | 戸上電機製作所 | 電気機器 | 461人 | 39.0歳 | 約674万円 |
| 大分 | ジェイリース | 家賃保証 | 451人 | 38.2歳 | 約571万円 |
| 佐賀 | オプティム | 情報・通信 | 398人 | 33.4歳 | 約623万円 |
| 長崎 | リンガーハット | 外食 | 151人(連結587人) | 46.6歳 | 約743万円 |
(各社の有価証券報告書の「提出会社の状況」。基準日は多くが2026年3月末で、決算期の違う会社は直近の期末。平均年間給与は賞与と残業代を含む。大分銀行は正規雇用、アクシーズは総合職の値。肥後銀行・鹿児島銀行は九州フィナンシャルグループの有価証券報告書に載っている値)
一覧で目立つのは、各県で最大級の受け皿が地方銀行だということです。鹿児島・熊本・大分・宮崎・佐賀では、地元の銀行が単体で1,000〜2,000人規模の雇用を持っています。平均年間給与は約620〜730万円です。
銀行以外では、熊本の平田機工(生産設備)、鹿児島の新日本科学(医薬品の受託研究)、宮崎の旭有機材(化学)、佐賀の戸上電機製作所(電気機器)など、全国で事業をしている製造業・研究機関が本社を地元に置いています。長崎は上場企業の本社が2社しかなく、この点では九州で最も選択肢が少ない県です。
なお、この平均年間給与は各社の単体の平均で、年齢や職種の構成で変わります。県の賃金統計とは集計の対象も方法も違うので、そのまま比べることはできません。
福岡に本社がある会社の拠点も、隣県では大きい
もうひとつ見落としやすいのが、福岡に本社がある会社の支社・支店です。九州電力、JR九州、西日本鉄道、九州全域に店舗を持つ小売業などは、九州の各県に拠点を置いています。
経済センサスで見ると、民営事業所で働く人のうち、福岡県に本社がある会社の事業所で働く人は、佐賀で10.5%、大分で6.9%、長崎で6.0%、熊本で5.6%、宮崎で4.8%、鹿児島で4.1%です。とくに佐賀は、10人に1人が福岡本社の会社で働いています。福岡本社の大手企業については福岡の上場企業まとめにまとめています。
福岡本社の会社に入り、地元の支社で働く。これも「地元に残って大きな会社で働く」ための道のひとつです。ただし、九州全域に拠点がある会社では、県をまたぐ異動があることが多い点は確認しておいてください。
地元で大企業に勤める道を選ぶ手順
ここまでを、地元で大企業に勤めたい人の行動に落とすと、次の順になります。
1. 地元にある大企業の拠点を洗い出す。本社だけでなく、工場・支社・店舗まで含めて、地元に拠点がある会社を並べる。県の企業誘致の資料や、ハローワーク・県の就職支援サイトの求人が手がかりになります。
2. 拠点の役割を確かめる。主力工場なのか、営業の出先なのか。採用が「地域限定」か「全国転勤あり」か。長く働けるかどうかは、ここで決まります。
3. 地元本社の上場企業を確認する。各県の地方銀行と、全国で事業をしている製造業が中心です。有価証券報告書の「従業員の状況」で、平均年齢・平均年間給与・人数を見ておきます。
4. 福岡本社の会社も候補に入れる。とくに佐賀・大分では、福岡本社の会社の拠点が大きな働き口です。
九州7県の年収の差や、大企業で働く人の割合が年収にどう効くかは、九州7県の平均年収ランキングで解説しています。県外に本社がある会社の事業所で働く人の割合は、福岡の場合を支店経済のデータで詳しく見られます。大企業と中小企業の待遇差は企業規模別のデータにまとめています。
よくある質問
Q. 九州で大企業の本社が多いのはどこですか?
福岡県です。会社全体で従業員1000人以上の会社の本社は、福岡が131社で、他の6県は7〜20社です(経済センサス‐基礎調査、2024年6月時点)。福岡以外では大分(20社)と熊本(19社)が多く、長崎・宮崎(8社)と佐賀(7社)が少なくなっています。
Q. 地元に大企業の本社がなくても、大企業で働けますか?
働けます。福岡以外の6県でも、民間の会社で働く人の2〜3割は大企業の事業所で働いています。その9割以上は本社ではなく、県外に本社がある会社の工場・支社・店舗などです。地元で大企業に勤めるなら、工場や支社の採用が主な入口になります。
Q. 地元の上場企業で、いちばん大きいのはどこですか?
福岡以外の6県では、多くの県で地方銀行が単体の従業員数で最大級です。鹿児島銀行・肥後銀行(どちらも九州フィナンシャルグループ)が約2,000人、大分銀行・宮崎銀行・佐賀銀行が1,100〜1,500人です。製造業では熊本の平田機工(約1,200人)が大きく、長崎は上場企業の本社が2社しかありません。
Q. 工場で働くと、転勤はありますか?
会社と採用の区分によります。工場や拠点ごとの「地域限定」の採用であれば、多くの場合、異動は拠点の中か近くに限られます。全国採用や総合職の場合は、他の県の工場や本社への異動がありえます。応募の前に、採用の区分と異動の範囲を確かめてください。
本社の数ではなく、拠点で探す
九州の福岡以外の県では、大企業の本社は少なく、その点で福岡とは大きな差があります。けれども、大企業で働く人の割合は福岡と大きくは違わず、その受け皿は県外本社の工場や支社、地元の銀行、福岡本社の会社の拠点です。
「地元に大企業がない」と考える前に、地元にどんな大企業の拠点があるかを一度書き出してみてください。本社の数では見えなかった選択肢が見えてくるはずです。

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