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福岡で会社は本当に増えているのか。法人番号データで読む10年

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者
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「福岡は起業が盛ん」——よく聞く話です。ただ、何社増えたのか、どのくらいのペースなのかを数字で見た人は多くありません。

そこで、国税庁の法人番号データから、いま福岡市にある法人を設立年ごとに10年分数えました。結論から言うと、新しい年ほど件数は多いものの、この数え方からは「新設が何%増えた」とまでは言えません。この記事では、その実数と読み方を整理します。

このコラムでわかること
  1. 設立年ごとに数えた件数
  2. 年ごとの並びを見る
  3. 「起業が盛ん」の意味を分けて考える
  4. 生活コストという構造的な理由
  5. 数字から言えること・言えないこと
  6. よくある質問
  7. 件数は、数え方とセットで読む

設立年ごとに数えた件数

2026年3月31日時点で福岡市に本店を置き、登記記録が閉鎖されていない法人(82,967社)を、法人番号が指定された年(おおむね設立年)ごとに数えた件数は次のとおりです。

年法人数(2026年3月末時点)
20162,468社
20182,539社
20202,682社
20223,160社
20243,436社
20253,577社

2016年は2,468社、2025年は3,577社です。ただし、これは各年に設立された法人の総数ではありません。途中で閉鎖したり市外へ本店を移したりした法人は入らず、市外から移ってきた法人は入ります。古い年ほど閉鎖などで抜けた法人が多くなるため、新しい年ほど件数が多く出やすく、この差を「新設が45%増えた」とは読めません。

詳しい年次データは福岡市 会社設立データに全年分を載せています。

POINT

新しい年ほど件数は多いが、閉鎖・転出した法人が抜けた後の数なので、そのまま「新設の伸び」とは読めない。数字は、数え方とセットで見る。

年ごとの並びを見る

年ごとの並びには、ひとつ段差があります。

2016〜2020年は2,468〜2,683社、2021〜2025年は3,106〜3,577社で、2020年と2021年の間で件数が一段多くなっています。

時期は、副業の解禁、リモートワークの普及、雇用への不安など、働き方が大きく変わった2020年前後と重なります。ただし閉鎖・転出の影響を除いた設立数ではないため、このデータだけで理由までは確かめられません(副業から独立するまで・会社員のまま起業する)。

仮に設立が増えていたとしても、「福岡だから」より「全国的な変化が福岡でも起きた」と見るほうが自然です。福岡固有の要因だけで説明しないほうがいい。

「起業が盛ん」の意味を分けて考える

①新設の数が多い——福岡市で年3,577社。政令市の中では上位ですが、東京・大阪とは桁が違います。

②起業しやすい環境がある——支援制度、生活費の安さ、都市のコンパクトさ。ここは福岡の実際の強みです(福岡がスタートアップ都市と言われる理由・福岡の創業支援制度)。

③成功しやすい——これは別の話で、新設数からは何も言えません。廃業のほうは、法人番号データでは正確に追えません(登記記録の閉鎖まで時間がかかるため)。

「件数が多い」を「成功しやすい」と読み替えないこと——これが数字を見るときの最初の注意点です(廃業率の実際)。

生活コストという構造的な理由

福岡で起業のハードルが低い理由のうち、最も測れるのが固定費です。

家賃、事務所費、生活費が東京より低い。同じ自己資金でも、事業が回り始めるまでの持ちこたえられる期間が長くなります(都市別の生活コスト比較・運転資金は何ヶ月分必要か)。

必要な生活費と、そこから逆算した必要売上はライフプランで計算できます。「いくら稼げば続けられるか」を先に数字にすると、判断が早くなります。

数字から言えること・言えないこと

言えること: ①いま福岡市にある法人のうち、2025年に設立されたものは3,577社 ②2021年以降の年は、それ以前より件数が一段多い ③会社の形が変わってきている(残っている法人のうち合同会社の比率は、2016年の14%に対し2025年は27%。合同会社が増えている実数)。

言えないこと: ①各年に設立された法人の総数と、その増加率 ②存続率 ③売上規模 ④起業した人の属性。法人番号データには、これらの情報がありません。

だから、「会社が増えているから自分もうまくいく」という推論は成り立ちません。

よくある質問

Q. このデータの出所は何ですか?

国税庁の法人番号公表サイトの基本3情報(gBizINFO 経由で一括取得)です。福岡市に本店を置き、登記記録が閉鎖されていない82,967社が対象。断面は2026年3月31日です。

Q. 「設立」ではなく「法人番号の指定」なのはなぜですか?

法人番号は設立登記の後に指定されるため、2016年以降はほぼ設立年と一致します。2015年は制度開始時に既存法人へ一括指定されたため、新設数として扱えません。

Q. 個人事業の開業は含まれますか?

含まれません。法人だけの数字です。個人事業の開業届は別の統計になります(個人事業主の始め方)。

Q. 廃業した会社は除かれていますか?

登記記録が閉鎖された261社は除いています。ただし実質的に活動していない法人は残ったままなので、「活動中の会社数」とは一致しません。また、途中で市外へ本店を移した法人は入らず、市外から移ってきた法人は入ります。

件数は、数え方とセットで読む

いま福岡市にある法人を設立年ごとに数えると、2016年は2,468社、2025年は3,577社。ただし閉鎖・転出した法人が抜けた後の数なので、「新設が1.45倍になった」とは読めません。2021年以降の件数が一段多いことは確かですが、理由まではこのデータから分かりません。どちらにしても、成功率を示す数字ではありません。判断材料として使い、根拠として使わないこと。

自分の構想が福岡で成立するか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。

出典
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