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起業の廃業率の実際。「5年で8割が消える」は本当か

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者

起業を調べていると、必ず「創業5年で8割が廃業する」「10年後に残るのは1割」といった数字に出会います。これで足がすくむ人は多い。ですが、この数字は出典をたどると、かなり事情が違います。

結論から言うと、公的統計が示す生存率は、法人と個人事業でまったく異なります。中小企業白書の分析では、法人の5年後生存率は約8割、個人事業は約4割という水準が示されてきました[要確認: 最新版の数値と調査年]。「5年で8割が消える」は、個人事業の数字か、出典不明の孫引きであることが多い。この記事では、数字の読み方と、生存を分ける条件を整理します。

このコラムでわかること
  1. なぜ数字が食い違うのか
  2. 廃業と倒産は別物
  3. 生存を分ける条件
  4. 数字の正しい使い方
  5. よくある質問
  6. 怖がるべきは廃業率ではなく、準備不足

なぜ数字が食い違うのか

理由は3つあります。

①母集団が違う。法人だけを見るか、個人事業を含むか。個人事業は開業も廃業も手続きが軽いため、「試しに開業届を出してやめた」も統計上の廃業に入ります。②「廃業」の定義が違う。倒産(債務を返せず法的整理)と、廃業(自主的にやめる)は別物です。黒字のまま後継者不在で畳むケースも廃業に数えられます。③期間の取り方が違う。1年後・3年後・5年後・10年後で数字は大きく動きます。

つまり、「8割が消える」を怖がる前に、それが何の8割かを確認する必要があります。倒産して負債を抱える割合と、自主的にやめる割合は、生活への影響がまったく違います。

廃業と倒産は別物

ここは分けて理解しておく価値があります。

倒産は、債務の支払いが不能になった状態。負債が残り、代表者保証があれば個人にも及びます。廃業は、事業をやめる意思決定。債務を清算できる状態でやめれば、負債は残りません

日本の廃業のうち相当数は、業績不振ではなく経営者の高齢化と後継者不在によるものです。この層は「起業の失敗率」とは無関係ですが、統計上は同じ「廃業」に入ります。数字を自分の判断材料にするときは、この層を除いて考える必要があります。

POINT

「8割が消える」の内訳を開くと、倒産・自主廃業・高齢引退が混ざっている。自分が恐れているのがどれなのかを先に決めると、対策が具体的になる。

生存を分ける条件

統計の分解より、実務的に効くのは「何が生存を分けるか」です。現場で共通するのは次の4点です。

①開業時の手元資金の厚さ。事業が畳まれる直接の原因は、赤字ではなく現金切れです。同じ事業計画でも、運転資金が3ヶ月分か12ヶ月分かで生存率は変わります運転資金は何ヶ月分必要か)。

②固定費の軽さ。売上ゼロの月に出ていく金額。ここが小さいほど、試行錯誤に使える時間が長くなります。高い家賃と正社員から始めた事業は、修正の余地が少ない

③開業前に売上の実績があったか。副業や受注実績を持って開業した事業と、開業してから顧客を探し始めた事業では、立ち上がりの速さが違います(会社員のまま起業する)。

④開業する事業と経験の接続。関連する職務経験がある分野は、需要も原価も見積もりの精度が高い。未経験分野は、学習コストが運転資金を食います。

この4つは、いずれも開業前に決まるというのが重要な点です。生存率は運ではなく、準備の設計で相当部分が決まります。

数字の正しい使い方

廃業率の数字は、始めない理由に使うのではなく、設計の基準に使うものです。

「5年で半分がやめる」なら、やめる理由の上位(資金ショート、売上の立ち上がり遅れ、健康)に対する備えを先に作る。12ヶ月の資金繰り表を作り、谷の月を特定し、そこを越える現金を持つ(起業資金はいくら必要か)。撤退ラインを事前に決めておく——「12ヶ月やって月○万円に届かなければ戻る」と決めておけば、判断が遅れて傷が深くなることを避けられます。

なお、福岡は開業率が全国でも高い水準で推移してきました(福岡の開業率)。開業が多い地域は廃業も多くなりますが、それは新陳代謝の指標であって、危険度の指標ではありません

よくある質問

Q. 飲食店は特に廃業率が高いと聞きます。

初期投資が重く固定費が高い業態は、資金が尽きるまでの時間が短くなります。業態の問題というより、固定費と運転資金の比率の問題です(福岡で飲食店を開業する)。

Q. 廃業したら借金はどうなりますか?

事業形態と保証の有無で変わります。法人でも代表者保証が付いていれば個人に及びます。借りる時点で保証の形を確認しておくことが、いちばんの備えです(起業に失敗したらどうなるか)。

Q. 生存率を上げるために、最初は小さく始めるべきですか?

多くの業態でその通りです。ただし小さすぎて採算ラインに届かない設計もあるため、「損益分岐点に届く最小規模」を計算してから決めてください。

Q. 統計の最新値はどこで見られますか?

中小企業庁の中小企業白書に、生存率・開廃業率の分析が掲載されています。調査年と母集団の定義を必ず確認してください。

Q. 福岡の廃業の実数は分かりますか?

法人番号データからは正確に追えません。登記記録の閉鎖まで時間がかかるためで、福岡市82,967社のうち閉鎖済みは261社にとどまります(福岡市 会社設立データ)。実質的に活動していない法人が残る構造なので、「廃業が少ない」とは読めません。新設側は2016年2,468社→2025年3,577社と増えていますが、これは挑戦する人の数であって成功率ではない——ここを混同しないでください。

怖がるべきは廃業率ではなく、準備不足

廃業率という数字は、平均であって自分の確率ではありません。手元資金が厚く、固定費が軽く、すでに売れた実績があり、経験が接続している事業と、その逆の事業を同じ確率で語ることに意味はない。数字を見るべきなのは、始めるかどうかを決めるためではなく、どう始めるかを決めるためです。

自分の設計は、4つの条件をいくつ満たしているか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。計画の弱いところから一緒に見ます。

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