← コラム一覧

長崎と福岡、どちらで働くか。平均年収の差は約48万円、製造業どうしなら約14万円

寺木 健人
監修:寺木 健人転職・キャリア担当・人材業界出身
公開

長崎で生まれ育って福岡で働いている人、長崎で働きながら福岡への転職を考えている人は多いはずです。実際、長崎から福岡へ移る人は、九州の中でも目立って多くなっています。

結論から言うと、長崎と福岡の平均年収の差は約48万円です(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。ただしこの差は業種によってまるで違い、製造業どうしなら約14万円、技術系の専門サービス(学術研究・専門・技術サービス業)では長崎のほうが約13万円高い水準です。逆に、卸売・小売、情報通信、金融・保険といった事務・営業・ITの仕事では、差が約90〜150万円に広がります。長崎に戻るか、福岡に出るかは、「どの業種で働くか」でほぼ答えが決まります。

このコラムでわかること
  1. 長崎は、九州で最も多く福岡へ移っている県
  2. 年収の差は、業種でまるで違う
  3. 大きな工場の多くは、県外に本社がある
  4. 求人は、技術と医療に厚い
  5. 家賃は長崎が安く、それ以外の物価はむしろ高い
  6. 西九州新幹線で、福岡との距離は縮んだ
  7. 戻るときに使える支援と、窓口
  8. 自分の場合を判断する手順
  9. よくある質問
  10. 長崎に戻るかどうかは、業種で決まる

長崎は、九州で最も多く福岡へ移っている県

総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)によると、長崎県から福岡県へ移った人は8,057人、福岡県から長崎県へ移った人は5,685人で、差し引き2,372人が福岡へ移っています(外国人を含む。日本人に限ると2,550人)。九州の他の6県の中で、差し引きの数が最も多いのが長崎です。

年齢で見ると、日本人の差し引きは15〜19歳が712人、20〜24歳が903人です。進学と就職の両方で、長崎から福岡へ人が動いています。高校を出て就職する人に限っても、長崎の高校生のうち県外で就職した人の41.2%が福岡県で就職しています(学校基本調査、2025年3月卒業)。

一方で、25歳を過ぎると流れは細くなります。25〜29歳では、長崎から福岡へ1,180人、福岡から長崎へ900人(日本人)。30〜34歳では635人と524人です。20代後半からは、福岡から長崎へ戻る人も、それなりの数がいるということです。九州全体の人の流れは九州から福岡への人口移動で詳しく見ています。

年収の差は、業種でまるで違う

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年、企業規模10人以上・フルタイムの一般労働者)から、所定内給与×12+年間賞与で年収を推計します。

長崎県の平均は約419万円、福岡県は約466万円で、差は約48万円です。年代別の差は、20代で約25万円、30代で約30万円、40代で約53万円、50代で約67万円と、年齢が上がるほど開きます。

ところが、業種ごとに比べると景色が大きく変わります。

業種長崎福岡福岡との差
学術研究・専門・技術サービス約602万円約590万円長崎が約13万円高い
製造業約453万円約467万円約14万円
医療・福祉約401万円約416万円約15万円
教育・学習支援約511万円約566万円約55万円
卸売・小売約386万円約473万円約88万円
情報通信約462万円約569万円約107万円
金融・保険約476万円約627万円約150万円

(男女計・企業規模計。県・業種別の表には働く人の数が載っていないため、働く人の少ない業種では値がぶれることがあります。目安として見てください)

製造業、医療・福祉、技術系の専門サービスでは、長崎と福岡の差は小さいか、長崎のほうが高い。一方で、卸売・小売、情報通信、金融・保険では差が大きい。平均の48万円という数字は、この2つのグループを混ぜた結果です。

技術職や医療の仕事をしている人にとって、長崎に戻ることは年収面で大きな損にならない可能性があります。逆に、営業・事務・IT・金融の仕事なら、福岡で働くほうが年収を上げやすいと言えます。

男女別に見ると、差の大きさはさらに違います。男性の差は約56万円(長崎 約467万円、福岡 約523万円)ですが、女性の差は約23万円(長崎 約357万円、福岡 約380万円)です。女性の場合、長崎と福岡の年収の差は、男性の半分以下ということになります。

パートやアルバイトで働く場合は、最低賃金の差も目安になります。2026年度の改定の答申では、長崎県が1,087円(11月2日発効予定)、福岡県が1,114円(10月4日発効予定)で、1時間あたり27円の差です。

大きな工場の多くは、県外に本社がある

長崎の製造業には、造船と電子部品という2つの柱があります。経済産業省の経済構造実態調査(2024年実績)で、長崎県の製造品出荷額(約2兆3,544億円)のうち、電子部品が32.1%、造船を含む輸送機械が21.7%を占めます。県の資料には、1857年(安政4年)に始まった三菱重工業の長崎造船所や、ソニー、SUMCO、京セラ(諫早市で新工場を計画)といった名前が並びます。

こうした大きな工場の多くは、東京などに本社がある会社の事業所です。経済センサス(2024年)で見ると、長崎市の製造業で働く人の32.6%が東京に本社がある会社の事業所で働いています。長崎県全体の平均(すべての業種で10.6%)と比べると、製造業では東京本社の比率が高くなっています。

会社の規模で比べても、1000人以上の企業どうしの年収差は約22万円にとどまります(長崎 約524万円、福岡 約546万円)。長崎で大きな工場や技術系の会社に勤められるなら、福岡との年収差はかなり小さくなる、ということです。

求人は、技術と医療に厚い

厚生労働省の職業安定業務統計(2025年度平均、働く場所の県で集計)で、長崎県の有効求人倍率は1.24倍です。福岡県の1.01倍より高く、正社員に限って計算しても長崎1.05倍、福岡0.88倍と、長崎のほうが求職者1人あたりの求人は多くなっています。

ただし、長崎で働く人の業種の構成は福岡と違います。経済センサスで見ると、長崎県で働く人の22.9%が医療・福祉で(福岡県は17.8%)、情報通信は1.1%にとどまります(福岡県は2.9%)。求人も、医療・福祉や技術系に厚く、事務・企画・ITの求人は福岡に集まっています。求人倍率が高いことは、「どの仕事でも見つけやすい」という意味ではありません。自分の職種の求人が長崎にあるかを、先に確かめる必要があります。福岡の職種ごとの求人の状況は福岡の採用市場のデータで見られます。

家賃は長崎が安く、それ以外の物価はむしろ高い

生活費では、家賃は長崎のほうが安くなります。住宅・土地統計調査(2023年)の民営借家の家賃は、長崎市が月約5万1,700円、福岡市が月約5万9,200円で、年間にすると約9万円の差です。

一方で、家賃以外の物価は長崎のほうが高いくらいです。総務省の消費者物価地域差指数(2025年、全国=100)は、家賃を除いた総合で長崎県100.0、福岡県99.1。家賃を含めた総合でも、長崎市は100.2で、福岡市(99.3)を上回っています。

つまり、生活費で長崎が有利になるのは主に家賃で、年10万円前後です。年収の差が家賃の差を上回る業種(卸売・小売、情報通信、金融など)では、福岡で働くほうが手元に残る額は多くなります。家賃と物価の比べ方は九州7県の家賃相場と物価にまとめています。

西九州新幹線で、福岡との距離は縮んだ

2022年に西九州新幹線が開業し、長崎と博多は最短1時間20分で結ばれるようになりました(JR九州の案内による。武雄温泉駅でリレー特急と対面で乗り換え)。毎日の通勤には現実的ではありませんが、福岡で働きながら週末に長崎の実家へ帰る、長崎に住みながら月に数回福岡へ出張する、といった行き来はしやすくなっています。

「長崎に戻るか、福岡に残るか」の二択だけでなく、福岡の会社に勤めながら長崎との行き来を続ける、長崎の会社に勤めながら福岡の取引先とつながる、という働き方も選びやすくなったと言えます。

戻るときに使える支援と、窓口

長崎県の移住支援金(世帯100万円、単身60万円、子育て加算あり)は、東京23区に住んでいた人や通勤していた人が対象で、福岡から戻る人は対象になりません。ただし、東京圏以外から移る人向けに独自の助成を設けている市町もあるので、戻る先の市町に確認する価値はあります。

仕事探しでは、長崎県が運営する就職応援サイト「エヌナビキャリア」に県内企業の求人が集まっています。なお、福岡にある「ながさきUIターン就職支援センター」は学生の就職を主な対象とする窓口なので、社会人の転職相談は県や市町の窓口、転職サイトを使うのが現実的です。

自分の場合を判断する手順

1. 自分の業種で差を見る。平均の48万円ではなく、上の業種別の表で比べる。製造・医療・技術系なら差は小さく、事務・営業・IT・金融なら大きい。

2. 長崎で働ける会社の規模を確かめる。大きな工場や技術系の会社なら、福岡との差は平均よりかなり小さい。

3. 求人を先に探す。求人倍率が高くても、自分の職種の求人があるとは限らない。エヌナビキャリアや転職サイトで実際の求人を見る。

4. 家賃と行き来の費用を足し引きする。家賃の差は年10万円前後。新幹線での行き来が多いなら、その費用も入れる。

よくある質問

Q. 長崎から福岡に出ると、年収はいくら上がりますか?

平均では約48万円の差があります(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。ただし業種で大きく違い、製造業どうしなら約14万円、技術系の専門サービスでは長崎のほうが高い水準です。卸売・小売や金融では差が約90〜150万円になります。

Q. 福岡から長崎に戻るとき、移住支援金はもらえますか?

長崎県の移住支援金は東京23区から移る人が対象なので、福岡から戻る場合は対象外です。市町によっては東京圏以外からの移住者向けの独自の助成があるので、戻る先の市町に確認してください。

Q. 長崎と福岡は通勤できますか?

西九州新幹線で最短1時間20分ですが、毎日の通勤には現実的ではありません。福岡で働きながら週末に帰る、長崎に住んで出張で福岡へ行く、といった形なら行き来しやすくなっています。

Q. 長崎は福岡より生活費が安いですか?

家賃は長崎のほうが年9万円ほど安い(長崎市と福岡市の比較)一方で、家賃以外の物価は長崎のほうがやや高い水準です。生活費の差は、主に家賃の差と考えてください。

長崎に戻るかどうかは、業種で決まる

長崎と福岡の年収差は、平均で見ると大きく見えます。しかし業種に分けると、製造業、医療、技術系の仕事では差が小さく、長崎で働く選択が十分に成り立ちます。逆に、事務・営業・IT・金融の仕事では、福岡の厚みが年収にはっきり表れます。

まずは自分の業種と、長崎で働ける会社の規模を確かめること。そのうえで、家賃と行き来の費用を足し引きすれば、「戻る」「残る」のどちらが自分に合うかが見えてきます。迷うときは、数字を並べて誰かに話してみるのも一つの方法です。

NEXT READ移住・Uターン移住に失敗して戻る人の特徴。出戻りを防ぐ準備移住・Uターン大分と福岡、どちらで働くか。平均年収の差は約37万円、福岡から移っても移住支援金の対象になりうる移住・Uターン佐賀から福岡市へ通勤する人は約8,600人。鳥栖・基山は通勤圏、佐賀市からは1.4%
GUIDEまとめ福岡で転職するなら。求人動向・年収相場・進め方の完全ガイド