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宮崎と福岡、どちらで働くか。年収差は約78万円、福岡からのUターンは移住支援金と奨学金返還支援の対象になりうる

寺木 健人
監修:寺木 健人転職・キャリア担当・人材業界出身
公開

宮崎は、九州の県庁所在地の中で福岡からいちばん遠い街のひとつです。高速バスの「フェニックス号」では、天神から宮崎駅まで4時間47分かかります(西鉄の案内による)。福岡で働く宮崎出身の人にとって、「戻る」は気軽に試せる選択ではありません。

結論から言うと、宮崎と福岡の平均年収の差は約78万円で、九州の福岡以外の6県の中で最も大きな差です(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。一方で、宮崎県の移住支援金は福岡県から移る人も対象で、県の奨学金返還支援はすでに卒業して働いている人も使えます。求人の数も、働く人の数に対しては九州で最も多い水準です。年収の差をそのまま受け止めつつ、それを埋める支援と条件を知っておくことが、宮崎と福岡を比べるときの出発点になります。

このコラムでわかること
  1. 宮崎と福岡の間は、人の行き来が少ない
  2. 年収の差は、どの規模の会社でも大きい
  3. それでも、求人の数は九州で最も多い
  4. 福岡から移る人も、移住支援金の対象
  5. 奨学金返還支援は、既卒者も使える
  6. 生活費は、九州で最も家賃が安い水準
  7. 戻るかどうかを判断する手順
  8. よくある質問
  9. 年収の差を、支援と生活で埋められるか

宮崎と福岡の間は、人の行き来が少ない

総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)で、宮崎県から福岡県へ移った人は3,952人、福岡県から宮崎県へ移った人は2,913人でした(外国人を含む)。差し引きは1,039人(日本人に限ると1,398人)。どちらの向きも、九州の福岡以外の6県の中で最も少ない人数です。距離の遠さが、人の行き来の少なさにも表れています。

高校を出て就職する人を見ても、宮崎の高校生のうち県外で就職した人の行き先として、福岡県は24.0%にとどまります(学校基本調査、2025年3月卒業)。九州の6県の中で最も低い割合です。県外で就職する高校生の4人に3人は、福岡以外の県で就職しています。宮崎の若い人にとって、福岡は数ある行き先のひとつです。

年齢で見ると、日本人の差し引きは15〜19歳が492人、20〜24歳が522人。進学と就職の両方の時期に、同じくらいの人数が福岡へ移っています。九州全体の人の流れは九州から福岡への人口移動で詳しく見ています。

年収の差は、どの規模の会社でも大きい

厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年、企業規模10人以上・フルタイムの一般労働者)から、所定内給与×12+年間賞与で年収を推計します。

宮崎福岡差
平均約388万円約466万円約78万円
20代約318万円約362万円約44万円
30代約389万円約448万円約59万円
40代約417万円約504万円約87万円
50代約432万円約545万円約113万円

(各年代は、5歳ごとの年齢階級を労働者数で重みづけして平均した独自計算です)

会社の規模をそろえても、差はあまり縮みません。1000人以上の企業どうしで約60万円、100〜999人で約56万円、10〜99人で約54万円です。九州の他の県では、会社の規模をそろえると福岡との差が小さくなる県がありますが、宮崎はどの規模でも50〜60万円の差があります。

男女別では、男性の差が約90万円(宮崎 約433万円、福岡 約523万円)、女性の差が約43万円(宮崎 約337万円、福岡 約380万円)です。女性のほうが差は小さいものの、九州の中では大きい部類に入ります。

パートやアルバイトで働く場合の目安になる最低賃金は、2026年度の改定の答申で宮崎県が1,085円(10月24日発効予定)。全国で最も低い額と同じ水準で、福岡県の1,114円(10月4日発効予定)とは1時間あたり29円の差です。

加えて、宮崎は大きな会社で働く人が少ない県です。この調査で1000人以上の企業で働く人の割合は、宮崎県が15.9%で、九州7県で最も低い水準です(福岡県は30.1%)。

業種別に見ると、宿泊・飲食サービスの差は約19万円と小さい一方、製造業で約66万円、金融・保険で約135万円の差があります(県・業種別の表は働く人の数が非公表のため、目安の値です)。宮崎で年収を福岡に近づけられる仕事は、限られていると考えておいたほうが現実的です。

それでも、求人の数は九州で最も多い

年収の差は大きい一方で、仕事の見つけやすさは違う姿を見せます。厚生労働省の職業安定業務統計(2025年度平均、働く場所の県で集計)で、宮崎県の有効求人数は約2万6,600件。働く人1,000人あたりにすると約54件で、九州7県で最も多い水準です(福岡県は約42件)。有効求人倍率は1.30倍、正社員に限って計算すると1.07倍で、どちらも福岡県(1.01倍、正社員0.88倍)を上回ります。

経済産業省の経済構造実態調査(2024年実績)では、宮崎県の製造品出荷額(約1兆9,140億円)のうち、食料品が24.4%、電子部品が13.4%を占めます。農業産出額は全国7位(九州農政局、2024年)で、食と農の仕事が厚い県です。県の資料には、半導体関連の工場として、SUMCO TECHXIVやラピスセミコンダクタの宮崎の工場の名前が挙がっています。

「年収は低めだが、働く口はある」。これが宮崎と福岡を比べたときの基本の構図です。福岡側の求人の状況は福岡の採用市場のデータで見られます。

福岡から移る人も、移住支援金の対象

宮崎県の移住支援金の大きな特徴は、東京圏・名古屋圏・大阪圏に加えて、福岡県から移る人も対象になっていることです。九州の他の県では、移住元を東京23区などに限っている県もあるので、福岡で働く宮崎出身の人にとっては使える可能性のある制度です。

主な条件は次のとおりです(宮崎県の案内による)。住民票を移す直前の10年間のうち、通算5年以上、三大都市圏か福岡県に住んでいたか通勤していたこと。そして、住民票を移す直前に、連続して1年以上、三大都市圏か福岡県に住んでいたこと。福岡の大学に通いながら福岡の会社に就職した人は、通学期間も通算に含められます。

就職で申請する場合は、県の「ふるさと宮崎人材バンク」などのマッチングサイトに移住支援金の対象として掲載された求人に、掲載日以降に応募し、週20時間以上の無期雇用で就職することが必要です。市町村によって対象になる働き方が違うので、移住先の市町村に事前に確認してください。

支給額は、世帯での移住が100万円(18歳未満の子どもを連れて移る場合は、1人につき最大100万円を加算。加算の有無や額は市町村によって違います)、単身での移住が60万円または30万円です。単身で60万円になるのは東京23区の要件を満たす人で、福岡県から単身で移る場合は30万円です。

奨学金返還支援は、既卒者も使える

宮崎県の「ひなた創生のための奨学金返還支援事業」は、県が認定した県内の企業(支援企業)に正社員として就職する人を対象に、奨学金の返還が必要な額の2分の1を支援する制度です。対象は在学生だけでなく、すでに卒業した人も含まれます(宮崎県の案内による)。

支援の上限は、4年制大学で100万円、大学院と6年制大学で150万円、短大などで50万円、高校などで40万円。就職してから1年、3年、5年が経ったときに交付されます。県の案内では、2026年5月から2027年4月までに就職する人の募集は、2026年10月ごろに行う予定です。

奨学金を返しながら福岡で働いている人にとっては、宮崎に戻ることで返還の負担を大きく減らせる可能性があります。対象になる企業は県が認定した企業に限られるので、まず支援企業の一覧を確認してください。

生活費は、九州で最も家賃が安い水準

住宅・土地統計調査(2023年)の民営借家の家賃は、宮崎県が月約4万5,800円で、九州7県で最も低い水準です。宮崎市は月約4万8,300円で、福岡市(約5万9,200円)と比べると年間約13万円安くなります。家賃以外の物価(総務省の消費者物価地域差指数、2025年、全国=100)は、宮崎県98.9、福岡県99.1で、ほとんど変わりません。

ただし、年収の差(平均で約78万円)に対して、家賃の差は年約13万円。生活費の安さだけで年収の差を埋めるのは難しい、というのが数字からわかることです。そこで効いてくるのが、上で見た移住支援金と奨学金返還支援です。家賃と物価の比べ方は九州7県の家賃相場と物価にまとめています。

戻るかどうかを判断する手順

1. 年収の差を、自分の年代で見る。20代なら約44万円、40代なら約87万円。年齢が上がるほど差は大きい。

2. 使える支援を足す。福岡県に5年以上住んでいれば移住支援金(単身30万円、世帯100万円+子育て加算)、奨学金を返しているなら返還支援(上限100万円など)の対象になりうる。

3. 家賃の差を足す。宮崎市と福岡市の家賃の差は年約13万円。

4. 求人を先に探す。求人の数は多いので、自分の職種で、支援の対象になる求人があるかを確かめる。

相談の窓口として、宮崎県は福岡市内にも事務所を置いています。宮崎での仕事探しは、「ふるさと宮崎人材バンク」も入口になります。

よくある質問

Q. 宮崎から福岡に出ると、年収はいくら上がりますか?

平均では約78万円の差があります(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。20代では約44万円、50代では約113万円です。会社の規模をそろえても50〜60万円の差があり、九州の中で最も差が大きい県です。

Q. 福岡から宮崎に戻るとき、移住支援金はもらえますか?

対象になりえます。宮崎県の移住支援金は、福岡県から移る人も対象です。ただし、直前の10年間に通算5年以上、福岡県などに住んでいたか通勤していたことなどの条件があり、単身で福岡県から移る場合の金額は30万円です。

Q. 奨学金返還支援は、社会人でも使えますか?

使えます。宮崎県の奨学金返還支援は、在学生だけでなく既卒者も対象です。ただし、県が認定した支援企業に正社員として就職することが条件で、次の募集は2026年10月ごろの予定です。

Q. 宮崎で仕事は見つかりますか?

働く人1,000人あたりの求人数は約54件で、九州7県で最も多い水準です(2025年度平均)。正社員の求人倍率も1.07倍と、福岡県(0.88倍)より高くなっています。ただし、年収の水準は低めです。

年収の差を、支援と生活で埋められるか

宮崎と福岡の年収差は、九州の中で最も大きく、会社の規模をそろえても縮みにくい。これは数字が示す事実です。一方で、宮崎には福岡から戻る人も使える移住支援金と、社会人も使える奨学金返還支援があり、求人の数も多く、家賃も安い。

年収の差をどこまで支援と生活の安さで埋められるかは、年代、奨学金の有無、家族の状況で人それぞれです。自分の条件で一度計算してみると、「戻る」か「残る」かを具体的に考えられるようになります。

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