鹿児島と福岡、どちらで働くか。20代の年収差は約14万円、医療・福祉は鹿児島のほうが高い

鹿児島から福岡の大学に進み、そのまま福岡で働いている。そんな人は少なくありません。そして社会人になって数年たつと、「このまま福岡か、鹿児島に戻るか」を考える時期が来ます。
結論から言うと、鹿児島と福岡の平均年収の差は約42万円です(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。ただしこの差は年齢で大きく変わり、20代では約14万円と、九州の他の県と比べても小さい水準です。業種では、医療・福祉は鹿児島のほうが約14万円高く、働く人の2割以上が医療・福祉にいる鹿児島では、この差の意味は大きくなります。物価(家賃を含む総合)は九州7県で最も安く、博多から鹿児島中央までは新幹線の最速便で1時間16分。医療・福祉の仕事をしている人や、20代で戻る人にとっては、鹿児島に戻る年収面の負担は小さいと言えます。
- 鹿児島は「18歳で出ていく」県
- 年収の差は、20代で小さく、50代で開く
- 医療・福祉は、鹿児島のほうが年収が高い
- 地元の会社が中心の県
- 求人と、生活費
- 新幹線で1時間16分の距離
- 戻るときの窓口
- よくある質問
- 戻る時期と業種で、答えが変わる
鹿児島は「18歳で出ていく」県
総務省の住民基本台帳人口移動報告(2025年)で、鹿児島県から福岡県へ移った人は6,049人、福岡県から鹿児島県へ移った人は4,155人で、差し引き1,894人が福岡へ移っています(外国人を含む。日本人に限ると2,169人)。
鹿児島の特徴は、15〜19歳の差し引きが999人(日本人)と、九州の他の県より際立って多いことです。この年代で鹿児島から福岡へ移った人は1,199人、逆は200人。高校を出て福岡の大学や専門学校に進む流れです。文部科学省の学校基本調査(2025年度)でも、鹿児島の高校から大学に進んだ人のうち1,213人(17.8%)が福岡県の大学に入学しています。20〜24歳の差し引きは494人で、就職期の移動は進学期の半分ほどです。
もうひとつの特徴は、高校を出て就職する人の県内就職率が58.5%と、九州の福岡以外の6県で最も低いことです(学校基本調査、2025年3月卒業。福岡県は82.1%)。そして県外で就職した人のうち、福岡県を選んだのは28.1%。鹿児島の若い人は、県外に出る割合が高く、その行き先は福岡だけではない、ということです。九州全体の人の流れは九州から福岡への人口移動で詳しく見ています。
年収の差は、20代で小さく、50代で開く
厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2025年、企業規模10人以上・フルタイムの一般労働者)から、所定内給与×12+年間賞与で年収を推計します。
| 年代 | 鹿児島 | 福岡 | 差 |
|---|---|---|---|
| 20代 | 約347万円 | 約362万円 | 約14万円 |
| 30代 | 約417万円 | 約448万円 | 約31万円 |
| 40代 | 約461万円 | 約504万円 | 約44万円 |
| 50代 | 約476万円 | 約545万円 | 約70万円 |
| 平均 | 約424万円 | 約466万円 | 約42万円 |
(各年代は、5歳ごとの年齢階級を労働者数で重みづけして平均した独自計算です)
20代の差は約14万円で、九州の福岡以外の6県の中で最も小さい水準です。一方、50代では約70万円まで開きます。鹿児島では40代以降の年収の伸びが緩やかになるためです。
「20代のうちに戻るなら、年収面の負担は小さい。40代・50代で戻るなら、差は大きくなる」。鹿児島への Uターンを考えるなら、時期がひとつの判断軸になります。男女別では、男性の差が約56万円(鹿児島 約468万円、福岡 約523万円)、女性の差が約18万円(鹿児島 約361万円、福岡 約380万円)で、女性のほうが差は小さくなります。
医療・福祉は、鹿児島のほうが年収が高い
業種別の年収を比べると、鹿児島ならではの特徴が見えます。
| 業種 | 鹿児島 | 福岡 | 福岡との差 |
|---|---|---|---|
| 医療・福祉 | 約430万円 | 約416万円 | 鹿児島が約14万円高い |
| 宿泊・飲食サービス | 約310万円 | 約334万円 | 約24万円 |
| 製造業 | 約436万円 | 約467万円 | 約31万円 |
| 金融・保険 | 約581万円 | 約627万円 | 約46万円 |
| 卸売・小売 | 約403万円 | 約473万円 | 約71万円 |
| 情報通信 | 約494万円 | 約569万円 | 約75万円 |
(男女計・企業規模計。県・業種別の表には働く人の数が載っていないため、働く人の少ない業種では値がぶれることがあります。目安として見てください)
医療・福祉では鹿児島のほうが高い水準です。経済センサス(2024年)で見ると、鹿児島県で働く人の22.8%が医療・福祉で、福岡県(17.8%)より5ポイントも多い。鹿児島では医療・福祉が最大の働き口で、その年収は福岡と比べても見劣りしません。看護師や介護職、医療事務などの仕事をしている人にとって、鹿児島に戻ることは年収面でほとんど損にならない可能性があります。
一方、卸売・小売や情報通信では70万円以上の差があります。営業やITの仕事なら、福岡の有利ははっきりしています。
地元の会社が中心の県
鹿児島のもうひとつの特徴は、東京などに本社がある会社の事業所が少ないことです。経済センサス(2024年)で、東京に本社がある会社の事業所で働く人の割合は、鹿児島県で7.7%。九州7県で最も低く、福岡県(15.2%)の半分ほどです。製造業に限ると4.1%で、鹿児島の製造業は地元の会社が中心だとわかります。
経済産業省の経済構造実態調査(2024年実績)では、鹿児島県の製造品出荷額(約2兆4,914億円)のうち、食料品が34.5%、飲料・飼料が20.2%を占めます。農業産出額は全国2位(九州農政局、2024年)で、食と農の関連の仕事が厚い県です。電子部品も13.3%あり、県内には京セラの工場が複数あります。
その一方で、鹿児島県で働く人の4.1%は、福岡県に本社がある会社の事業所で働いています(経済センサス、2024年)。九州に拠点を広げる福岡の会社に入り、鹿児島の事業所で働くという道もある、ということです。今いる会社や業界に鹿児島の拠点があれば、転職せずに戻れる場合もあります。
地元の会社が中心ということは、全国規模の大企業の転勤で鹿児島に来る仕事は少ないが、地元に根づいて長く働く会社は多い、ということでもあります。1000人以上の企業どうしの年収差は約34万円で、大企業に勤められれば差は平均より小さくなります。九州の他の県との比較は九州7県の平均年収ランキングにまとめています。
求人と、生活費
厚生労働省の職業安定業務統計(2025年度平均、働く場所の県で集計)で、鹿児島県の有効求人倍率は1.14倍、正社員に限って計算すると1.04倍です。福岡県(1.01倍、正社員0.88倍)よりは高いものの、九州の福岡以外の6県の中では、どちらも最も低い水準です。働く人1,000人あたりの求人数は約52件で、福岡県(約42件)より多くなっています。福岡側の職種ごとの求人の状況は福岡の採用市場のデータで見られます。
パートやアルバイトで働く場合の目安になる最低賃金は、2026年度の改定の答申で、鹿児島県が1,090円(10月25日発効予定)、福岡県が1,114円(10月4日発効予定)。差は1時間あたり24円です。
生活費は、九州で最も安い水準です。総務省の消費者物価地域差指数(2025年、全国=100)は、家賃を含む総合で鹿児島県96.4と九州7県で最も低く、家賃を除いても96.9です。福岡県は98.5(家賃を除くと99.1)。住宅・土地統計調査(2023年)の民営借家の家賃は、鹿児島市が月約5万300円、福岡市が月約5万9,200円で、年間では約11万円の差です。
鹿児島は、家賃だけでなく、家賃以外の物価も福岡より2ポイントほど安い。20代の年収差(約14万円)は、家賃の差(年約11万円)と物価の差でほぼ埋まる計算です。
新幹線で1時間16分の距離
博多から鹿児島中央までは、九州新幹線の最速の「みずほ」で1時間16分です。毎日の通勤には現実的ではありませんが、福岡で働きながら月に何度か帰省する、鹿児島に住みながら福岡の会社と仕事をする、といった行き来は十分にできる距離です。
戻るときの窓口
鹿児島県の移住支援金(世帯100万円、単身60万円、子育て加算あり)は、東京23区に住んでいた人や通勤していた人が対象で、福岡から戻る人は対象になりません。
仕事探しでは、県の就職サイト「かごJob」に県内企業の求人が集まっています。また、「鹿児島県ふるさと人材相談室」では、UIターンで就職したい人に対し、企業の意向を確認したうえで紹介状を出しています。福岡にいながら鹿児島の企業を紹介してもらえる窓口なので、戻ることを考え始めた段階で相談しておくと、情報が集めやすくなります。
よくある質問
Q. 鹿児島から福岡に出ると、年収はいくら上がりますか?
平均では約42万円の差があります(2025年、賃金構造基本統計調査からの推計)。ただし20代では約14万円で、50代では約70万円です。医療・福祉では鹿児島のほうが約14万円高い水準です。
Q. 福岡から鹿児島に戻るとき、移住支援金はもらえますか?
鹿児島県の移住支援金は東京23区から移る人が対象なので、福岡から戻る場合は対象外です。就職の相談は「鹿児島県ふるさと人材相談室」や県の就職サイト「かごJob」が使えます。
Q. 鹿児島は福岡より生活費が安いですか?
安いです。家賃を含む物価の総合は九州7県で最も低く(鹿児島県96.4、福岡県98.5、全国=100)、家賃は鹿児島市が福岡市より年約11万円安い水準です(2023年)。
Q. 鹿児島に戻るなら、何歳までがいいですか?
年収の面では、20代の差が約14万円と小さく、年齢が上がるほど差は開きます。ただし、何歳で戻るのがよいかは、仕事の中身や家族の事情で変わります。医療・福祉の仕事なら、年齢にかかわらず年収面の負担は小さい傾向です。
Q. 福岡の会社に勤めたまま、鹿児島で働くことはできますか?
会社によってはできます。鹿児島県で働く人の4.1%は、福岡県に本社がある会社の事業所で働いています(経済センサス、2024年)。今の会社や同じ業界の会社に鹿児島の拠点があるかを確かめると、転職せずに戻る道が見つかることがあります。
戻る時期と業種で、答えが変わる
鹿児島と福岡の年収差は、平均では約42万円。しかし20代では約14万円で、家賃と物価の安さでほぼ埋まります。医療・福祉では鹿児島のほうが高い水準です。一方で、40代以降や、営業・ITの仕事では、福岡の有利ははっきりしています。
18歳で福岡に出た人にとって、「いつ戻るか」「何の仕事で戻るか」は、年収の差を大きく左右します。自分の年代と業種で数字を並べ、戻るならどの時期が合うかを一度考えてみてください。ひとりで決めきれないときは、数字を持って誰かに相談するのもよい方法です。

「辞めるべきか、残るべきか。その手前の整理から一緒にやります。」
寺木に相談する(無料)