起業準備のやることリスト。辞める前と辞めた後で分ける

起業準備のチェックリストは検索すればいくらでも出てきますが、たいてい「全部やること」として並んでいます。実際に効くのは項目の網羅ではなく、順番です。
結論から言うと、準備は「在職中にしかできないこと」と「辞めた後でもできること」に分けるのが最大のコツです。信用や収入という土台は、会社を辞めた瞬間に失われます。この記事では、その分類に沿って順番つきのリストを示します。
- 原則: 信用が使えるうちに使う
- 在職中にやること(順番つき)
- 退職の前後でやること
- 辞めた後でやること
- よくある質問
- リストの目的は、辞める日を決めること
原則: 信用が使えるうちに使う
会社員という肩書きには、金融機関から見た信用がついています。退職した瞬間、この信用は消えます。住宅ローン、賃貸契約の審査、クレジットカードの発行——いずれも会社員のうちのほうが通りやすい。これは節約の話ではなく、事業を始めた後の選択肢の話です。
一方で、収入があるうちは時間が足りません。だから在職中は「時間より信用が要ること」に集中し、時間が要ることは辞めた後に回す——この配分が現実的です。
在職中にやること(順番つき)
①事業の検証。副業として小さく売ってみる。数件でも受注実績があれば、事業計画は空想から実測に変わります(会社員のまま起業する)。就業規則の副業規定を先に確認してください。
②自己資金の積み立て。毎月コツコツ貯めた履歴が、融資審査で効きます(創業融資の自己資金)。直前の一括入金では意味が変わります。
③生活防衛資金の確保。生活費の12ヶ月分を、事業資金とは別口座で(起業前の貯金はいくら必要か)。
④信用の要る手続き。住宅ローン、賃貸の更新・引っ越し、クレジットカード・車のローン。必要になる予定があるなら在職中に。
⑤家族との合意形成。決定の報告ではなく、検討段階での相談として(起業に家族が反対するとき)。
⑥資金計画と事業計画の作成。必要額の見積もり(起業資金はいくら必要か)、12ヶ月の資金繰り表(運転資金は何ヶ月分必要か)、創業計画書。
⑦融資の相談。公庫の創業融資は創業前でも相談・申込ができます(公庫の創業融資)。在職中のほうが返済原資を説明しやすい面もあります。
⑧許認可の要件確認。実務経験年数・事務所要件・資格。要件に「実務経験○年」があるなら、在職中に満たしておくのが最短です。
在職中の準備で本質的なのは、辞めた後に取り返せないものを先に取ること。信用・実務経験年数・自己資金の履歴——この3つは後から作れない。
退職の前後でやること
退職時期の設計。有給消化、賞与の支給日、社会保険の資格喪失日。退職日が月末か月初かで、その月の社会保険料の扱いが変わります(退職は何ヶ月前に伝えるかの段取りも参考に)。
健康保険の選択。任意継続か、国民健康保険か、家族の扶養か。保険料は前年所得で決まるため、辞めた直後の1年がいちばん高くなります。どちらが安いかは自治体の窓口で試算してもらえます。
年金の切り替え。厚生年金から国民年金へ。手続きに期限があります。
住民税。前年所得ベースで請求が来ます。退職後の資金計画に必ず入れてください。
失業給付の扱い。すぐに開業する意思がある場合、受給要件を満たさないことがあります。ハローワークで事前に確認を。
辞めた後でやること
開業届・青色申告承認申請(個人事業)。または会社設立の手続き。青色申告の承認申請には期限があるので、開業届と同時に出すのが安全です。
事業用口座とクレジットカードの用意。個人の家計と分けます。分けていないと、確定申告と資金管理が一気に苦しくなります。
会計ソフトの導入と、初月からの記帳。後でまとめてやろうとすると、まず終わりません。
税理士・社労士との接点作り。顧問契約まで行かなくても、相談先を持っておく。
保険の見直し。会社の団体保険が切れます。就業不能の備えは、個人事業ほど重要になります。
よくある質問
Q. 開業前の支出は経費になりますか?
開業準備のための支出は「開業費」として扱える場合があります。領収書を必ず保管してください。処理方法は税理士に確認を。
Q. 準備期間はどのくらい見るべきですか?
事業によりますが、検証に3〜6ヶ月、資金準備に6〜12ヶ月が現実的な目安です。準備が長すぎて機を逃す例もありますが、多いのは短すぎる例のほうです。
Q. 会社に起業の準備を知られたくありません。
在職中の副業は就業規則を確認したうえで。住民税の徴収方法から知られる経路については副業が住民税でバレる仕組みにまとめました。
Q. 全部を順番どおりにやる時間がありません。
優先順位は①検証 ②生活防衛資金 ③信用の要る手続き。この3つだけでも在職中に終えておけば、辞めた後の選択肢が大きく変わります。
Q. 会社の形と設立時期は、いつ決めますか?
定款を作る前です。福岡市の新設法人の27.3%は合同会社で、2016年の14.3%から比率が倍近くになりました(福岡市 会社設立データ)。設立月に季節性はほとんどなく(最多1月2,828社/最少7月2,252社=差26%)、準備が整った時点で進めて構いません。並行して、生活費の下限と必要売上をライフプランで数字にしておいてください。
リストの目的は、辞める日を決めること
準備リストを作る本当の効果は、抜け漏れ防止よりも「いつ辞められるか」が具体的になることです。自己資金があと何ヶ月分、検証があと何件、許認可の要件があと何年。数えれば日付が出ます。「いつか独立したい」が「来年6月」に変わったら、準備は半分終わっています。
自分の場合、何が足りていないのか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。準備の途中でも、これからの人でも構いません。

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