起業前の貯金はいくら必要か。生活防衛資金の計算

起業の準備で、事業計画は熱心に作るのに家計の計画は作らない——という人がとても多い。そして資金が尽きる理由の上位が、事業ではなく生活費だったりします。
結論から言うと、開業資金とは別に、生活費の12ヶ月分を「生活防衛資金」として確保するのが基本線です。融資はこの部分を出してくれません。この記事では、生活防衛資金の計算方法、退職によって増える固定費、福岡の生活コストを踏まえた月数の考え方、そして貯まるまでの現実的な過ごし方を整理します。
- 生活防衛資金は事業資金と分ける
- 計算方法——「今の生活費」ではない
- 福岡という条件をどう使うか
- 貯まるまでの、現実的な過ごし方
- よくある質問
- 家計の計画は、事業計画の一部
生活防衛資金は事業資金と分ける
まず原則から。開業資金・運転資金・生活費は、別の口座で管理してください。同じ口座に置くと、事業の現金が薄い月に生活費へ手を伸ばし、あるいは生活が苦しい月に事業資金を使う。どちらも起こります。
分けるべき理由はもうひとつあります。融資で調達できるのは事業に必要な資金だけで、生活費は対象外です(運転資金の考え方)。したがって生活費は、原則すべて自己資金で持つ必要があります。事業計画がどれだけ精緻でも、家計が3ヶ月で詰めば事業は続きません。
計算方法——「今の生活費」ではない
生活防衛資金の計算は3ステップです。
①現在の月次生活費を実測する。記憶ではなく、直近3ヶ月の口座とカードの明細から拾います。家賃・食費・水道光熱・通信・保険・教育費・交際費・サブスク。ここで多くの人が2〜3割の見落としをします。
②退職で増える固定費を足す。ここが見落とされがちです。会社員をやめると、社会保険料の会社負担が消えて全額自己負担になります。国民健康保険と国民年金へ切り替えれば、月額の負担は上がるのが普通です。しかも国保の保険料は前年所得で決まるため、辞めた直後の1年がいちばん高い。住民税も同様に前年所得ベースで請求が来ます。この2つで、月あたり数万円規模の増加を見込んでおく必要があります[要確認: 世帯構成別の目安額]。
③月数をかける。基準は12ヶ月。事業が黒字化して自分に報酬を出せるまでの期間を、多くの人は短く見積もります。1年分持っていれば、初年度に想定外が起きても判断を焦らずに済みます。
計算式にすると、(実測生活費 + 社会保険料・住民税の増加分) × 12ヶ月。福岡の単身世帯なら月15〜20万円台、子どもがいる世帯なら月30万円前後が実感に近いレンジです(福岡の生活費)。単身で年200万円台、家族世帯で年350万円前後——これが「事業資金とは別に必要な額」です。
生活防衛資金は事業の保険ではなく、判断の質を守るための資金。手元が薄いと、人は安い仕事を取り、値下げに応じ、断るべき取引を受ける。
福岡という条件をどう使うか
福岡は東京圏に比べて住居費が明確に安い。同じ生活水準なら、必要な生活防衛資金の総額が下がります。これは起業のハードルが構造的に低いということで、福岡で起業する実務的なメリットのひとつです(なぜ東京でなくてよいのか)。
一方で、単価も東京より低い傾向があります。BtoC の事業では特に、福岡の平均年収の水準と乖離した価格設定は通りません。コストが安い分だけ価格も低い——この前提で必要売上を組んでください。
貯まるまでの、現実的な過ごし方
「12ヶ月分」と聞いて、遠すぎると感じたなら、選択肢は3つです。
辞めずに始める。もっとも現実的です。会社員のまま副業として立ち上げ、売上が生活費の一部を賄うようになってから辞める(副業から独立へ・週末起業)。この場合、必要な生活防衛資金は「12ヶ月分」より小さくできます。副業の月商が生活費の3割を賄っていれば、必要な貯蓄も実質的に減ります。
生活のサイズを先に下げる。固定費を落としてから辞める。家賃・保険・車・サブスク。月3万円下げれば、12ヶ月分で36万円の貯蓄と同じ効果です。しかも効果は開業後もずっと続きます。
世帯収入で支える設計にする。配偶者の収入で家計の基礎を賄い、事業の立ち上がりを待つ。ただしこれは合意が要る話で、勝手に前提にすると家庭のほうが先に壊れます。数字を見せて話してください。
よくある質問
Q. 退職金を生活防衛資金に充ててもいいですか?
構いません。ただし退職金を開業資金と生活費の両方に使うと、どちらも薄くなります。先に生活費12ヶ月分を確保し、残りを事業へという順番を勧めます。
Q. 失業保険はもらえますか?
自己都合退職では給付までに待期・給付制限期間があり、またすぐに開業する意思がある場合は受給要件を満たさないことがあります。開業のタイミングと受給の関係はハローワークで事前に確認してください。
Q. 家族の生活費も含めて12ヶ月分ですか?
世帯として出ていく金額で計算します。配偶者に安定収入があるなら、世帯の不足分を12ヶ月分で計算すれば足ります。
Q. 生活防衛資金は自己資金として審査で評価されますか?
貯蓄額として通帳に載るため、資金力の説明材料にはなります。ただし事業に投下しない前提の資金なので、自己資金として全額カウントさせる考え方は取らないほうが安全です(自己資金の見られ方)。
Q. 「いくら貯まったら」の金額は、どう出しますか?
生活費から逆算します。家賃・食費・保険・将来の支出を入れて必要な手取りを出し、それに耐える月数を掛ける——これで「いくら必要か」が金額で出ます(ライフプラン)。「300万円くらい」と漠然と決めるより、自分の家計で出した数字のほうが早く動けます。事業側の運転資金は別枠で、運転資金は何ヶ月分必要かを参照してください。
家計の計画は、事業計画の一部
生活防衛資金を計算すると、開業の時期が具体的になります。あと8ヶ月で足りる、あと2年かかる、固定費を下げれば1年短縮できる——「いつか独立したい」が、日付のある計画に変わります。
自分の場合いくら要るのか、いつなら動けるのか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。家計の数字を持ってきてもらえれば、開業できる時期の逆算から一緒にやります。

「起業は特別な人のものではありません。準備の仕方から話しましょう。」
久保に相談する(無料)