福岡市で伸びている業種は情報通信と医療・福祉(5年で約2割増)。縮んだ業種と、それぞれの年収

転職や就職で業種を選ぶとき、「その業界は伸びているのか」は気になる点です。伸びている業種では人の採用が続き、未経験からの入口も広がりやすいからです。
結論から言うと、福岡市で働く人が大きく増えたのは、情報通信(約21%増)と医療・福祉(約21%増)です。どちらも2016年から2021年の5年で約2割増えました。反対に、宿泊・飲食サービスは約9%減、生活関連サービス・娯楽は約7%減と縮んでいます。ただし、伸びている業種の年収水準は大きく二つに分かれます。情報通信や専門サービスは年収が高く、医療・福祉やその他のサービス業は低めです。この記事では、総務省・経済産業省の経済センサスと、厚生労働省の賃金構造基本統計調査から、業種の伸びと年収を並べて見ていきます。
- 5年で、福岡市の働く人は約5.7万人増えた
- 業種別の伸びと、年収の水準
- 伸びている業種は「二つに分かれる」
- 縮んだ業種の多くは、コロナ禍の影響
- 事業所の数で見ると、小さな事務所が増えている
- 伸びている業種の中で、県外に本社がある会社の割合
- これから業種を選ぶときの考え方
- よくある質問
- 伸びているかどうかと、年収は別の軸
5年で、福岡市の働く人は約5.7万人増えた
経済センサス‐活動調査で、2016年と2021年の民営事業所で働く人(従業者)の数を比べると、福岡市は約86.7万人から約92.4万人へ、約5.7万人(6.5%)増えました。福岡県全体では3.3%の増加です。福岡市の伸びは県全体のおよそ2倍で、働く場としての福岡市への集中が続いていることがわかります。
ただし、この比較には注意が必要です。2021年の調査は、事業所の名簿の作り方が2016年から変わっています。福岡県の報告書でも2016年の数字は【参考】として扱われていて、厳密な増減ではなく、大まかな傾向を見るための参考比較です。また、2021年はコロナ禍の最中の調査で、とくに宿泊・飲食などの数字はその影響を強く受けています。
業種別の伸びと、年収の水準
業種ごとに並べると、次のとおりです。
| 業種 | 福岡市の増減(人) | 福岡市の増減率 | 福岡県の増減率 | 福岡県の年収水準 |
|---|---|---|---|---|
| 情報通信業 | +9,429人 | +21.1% | +17.6% | 約569万円 |
| 医療、福祉 | +20,551人 | +20.6% | +11.9% | 約416万円 |
| 不動産業、物品賃貸業 | +5,690人 | +17.2% | +13.0% | 約478万円 |
| サービス業(他に分類されないもの) | +16,797人 | +16.0% | +12.4% | 約380万円 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | +5,978人 | +15.4% | +18.1% | 約590万円 |
| 建設業 | +5,141人 | +9.1% | +4.8% | 約589万円 |
| 教育、学習支援業 | +1,902人 | +5.8% | +3.0% | 約566万円 |
| 運輸業、郵便業 | +1,926人 | +3.9% | +1.8% | 約429万円 |
| 製造業 | +688人 | +2.3% | +0.4% | 約467万円 |
| 卸売業、小売業 | −945人 | −0.5% | −1.1% | 約473万円 |
| 金融業、保険業 | −603人 | −1.8% | −4.8% | 約627万円 |
| 生活関連サービス業、娯楽業 | −2,527人 | −7.4% | −12.1% | 約407万円 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | −8,912人 | −9.4% | −8.2% | 約334万円 |
(増減は経済センサス‐活動調査の民営事業所の従業者数、2016年→2021年の参考比較。福岡市・福岡県の公表表から集計。年収水準は賃金構造基本統計調査2025年の福岡県・企業規模10人以上・男女計で、所定内給与×12+年間賞与の推計。両者は調査も時点も違うため、並べて傾向を見るためのもの)
人数で最も増えたのは医療・福祉で、5年で約2万人の増加です。率で見ると、情報通信と医療・福祉がどちらも約21%で並びます。
伸びている業種は「二つに分かれる」
表を年収の水準と重ねると、伸びている業種は性格の違う二つのグループに分かれます。
一つめは、年収の高い専門職のグループです。情報通信(約569万円)、学術研究・専門・技術サービス(約590万円)がここに入ります。ソフトウェア開発、Web・デジタル関連、設計・コンサルティング・士業などの仕事です。福岡市ではIT企業の進出やスタートアップ支援が続いていて、数字の伸びもその動きと重なります。福岡のIT企業の全体像は福岡のIT企業マップにまとめています。
二つめは、人手が必要で年収は低めのグループです。医療・福祉(約416万円)、その他のサービス業(約380万円)がここに入ります。医療・福祉は高齢化で需要が伸び続けていて、福岡県全体でも5年で約4.2万人増えました。「その他のサービス業」には、人材派遣、警備、ビルメンテナンス、コールセンターなどが含まれます。
同じ「伸びている業種」でも、どちらのグループかで働き方も年収も大きく違います。伸びているかどうかと、年収が高いかどうかは別の軸として見る必要があります。
縮んだ業種の多くは、コロナ禍の影響
縮んだ業種で目立つのは、宿泊・飲食サービス(福岡市で約8,900人減)と、生活関連サービス・娯楽(約2,500人減)です。どちらも、2021年の調査時点でコロナ禍の影響を大きく受けていた業種で、ここでの減少がそのまま長期的な縮小を意味するとは限りません。観光が戻った後の人の動きは、この調査からはわからないため、最新の求人の状況で確かめる必要があります。
一方、金融・保険(福岡市で1.8%減、福岡県で4.8%減)は、コロナ禍とは別の理由で人が減っていると考えられます。店舗の統廃合やデジタル化による事務の効率化が進んでいるためです。年収は約627万円と高い業種ですが、人が増える方向ではありません。
卸売・小売と製造業は、人数はほぼ横ばいです。どちらも福岡で働く人の多くを占める大きな業種で、伸びは小さくても、働く人の数そのものは大きいままです。
事業所の数で見ると、小さな事務所が増えている
同じ経済センサスで、福岡市の事業所の数も比べてみます(2016年→2021年の参考比較)。
| 業種 | 事業所数の増減 | 増減率 | 1事業所あたりの人数(2021年) |
|---|---|---|---|
| 不動産業、物品賃貸業 | +1,136 | +21.7% | 約6.1人 |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | +1,004 | +21.4% | 約7.9人 |
| 医療、福祉 | +885 | +15.8% | 約18.6人 |
| サービス業(他に分類されないもの) | +641 | +14.2% | 約23.6人 |
| 情報通信業 | +430 | +22.4% | 約23.0人 |
| 宿泊業、飲食サービス業 | −722 | −6.9% | 約8.8人 |
| 卸売業、小売業 | −1,233 | −5.8% | 約10.1人 |
不動産と学術研究・専門・技術サービスは、事業所の数が約2割増えていて、1事業所あたりの人数は6〜8人ほどです。士業の事務所、設計事務所、コンサルティングなど、小さな事務所が増えていることがうかがえます。独立・開業を含めた動きと考えられます。
一方、卸売・小売は、働く人の数はほぼ横ばい(−0.5%)なのに、事業所の数は約6%減りました。1事業所あたりの人数は2016年の約9.6人から約10.1人へ増えていて、店や拠点がまとまり、1か所が大きくなっていることがわかります。
伸びている業種の中で、県外に本社がある会社の割合
もうひとつ、伸びている業種の中身を見る手がかりがあります。2024年の経済センサス‐基礎調査で、福岡市の事業所で働く人のうち、県外に本社がある会社の事業所で働く人の割合を業種別に見ると、次のとおりです(この節の数字は2024年6月時点で、上の2016年・2021年の比較とは調査の種類が違います)。
| 業種 | 県外に本社がある会社で働く人 | うち東京本社 |
|---|---|---|
| サービス業(他に分類されないもの) | 50.6% | 37.5% |
| 情報通信業 | 42.9% | 27.8% |
| 学術研究、専門・技術サービス業 | 36.6% | 24.6% |
| 不動産業、物品賃貸業 | 23.5% | 16.8% |
| 医療、福祉 | 16.0% | 10.5% |
情報通信やその他のサービス業では、福岡市で働く人の4〜5割が、県外に本社がある会社の拠点で働いています。福岡市の伸びの一部は、東京などの会社が福岡に拠点を置いたり、拡げたりしたことによるものと考えられます。これに対して医療・福祉は、県外本社の割合が16.0%と低く、地元の法人が中心です。
同じ伸びている業種でも、「東京の会社の福岡拠点で働く」のか、「地元の法人で働く」のかで、昇進の道筋や転勤の有無は変わります。福岡の支店経済の全体像は支店経済のデータにまとめています。
これから業種を選ぶときの考え方
この数字を転職に使うなら、次の3つの見方が役に立ちます。
1. 伸びていて年収も高い業種を狙うなら、専門性が要る。情報通信や専門サービスは、伸びている分だけ採用も活発ですが、多くは技術や資格が前提です。未経験から入るなら、学び直しの時間を見込んでおく必要があります。
2. 伸びていて入りやすい業種は、年収の伸ばし方を考えてから入る。医療・福祉やその他のサービス業は、未経験からの入口が広い一方、年収の水準は低めです。資格の取得や管理職への道など、入った後に年収を上げる道筋があるかを先に確かめておくと安心です。福岡の介護の仕事については福岡の介護転職ガイドで詳しく扱っています。
3. 縮んだ業種は、理由を確かめてから判断する。宿泊・飲食のように、調査の時点の特殊な事情で縮んだ業種は、その後に状況が変わっている可能性があります。働く人が減った業種で求人が増えていれば、待遇の改善が進むこともあります。求人の状況は最新のデータで確かめてください。
福岡市の区ごとに、どんな業種の事業所が多いかは福岡市の区×業種のデータで見られます。こちらは2024年の経済センサス‐基礎調査の数字で、この記事の2016年・2021年の数字とは調査の種類が違います。業種ごとの年収の詳細は福岡の業種別年収ランキングにまとめています。
よくある質問
Q. 福岡で伸びている業種は何ですか?
経済センサスで2016年と2021年を比べると、福岡市で働く人の増加率が大きいのは情報通信(約21%増)、医療・福祉(約21%増)、不動産・物品賃貸(約17%増)、その他のサービス業(約16%増)、学術研究・専門・技術サービス(約15%増)です。人数では医療・福祉が約2万人増で最も多くなっています。
Q. 伸びている業種は年収も高いのですか?
業種によります。情報通信(約569万円)や学術研究・専門・技術サービス(約590万円)は福岡県の平均より高い一方、医療・福祉(約416万円)やその他のサービス業(約380万円)は低めです。伸びと年収は別に見る必要があります。
Q. 宿泊・飲食は今も縮んでいるのですか?
この記事の数字は2021年の調査で、コロナ禍の影響を強く受けた時点のものです。その後の動きはこの調査ではわからないため、2021年の減少がそのまま続いているとは言えません。最新の求人の状況で確かめてください。
Q. この数字は正確な増減ですか?
2021年の経済センサスは、2016年と事業所の名簿の作り方が違うため、厳密な比較はできません。福岡県も2016年の数字を参考値として扱っています。大まかな傾向を知るための参考比較と考えてください。
伸びているかどうかと、年収は別の軸
福岡市で伸びている業種は、年収の高い専門職のグループと、人手が必要で年収は低めのグループに分かれます。縮んだ業種の多くはコロナ禍の影響を受けた業種で、その後の状況は最新のデータで確かめる必要があります。
業種を選ぶときは、「伸びているか」と「年収はどうか」、そして「自分が入れるか・入った後に伸ばせるか」の3つを並べて考えてみてください。同じ伸びている業種でも、自分に合う入り方は人によって違います。

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