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資本金はいくらにすべきか。1円起業の落とし穴と適正額

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者

「資本金1円で会社が作れる」——制度としては事実です。ただ、実務では困る場面がいくつかあります

結論から言うと、資本金は「事業の初期費用をまかなえる額」が基本で、そこに①取引先の与信 ②許認可の要件 ③税務上の分岐を重ねて決めます。この記事では、判断材料を整理します。税務の判断は税理士に確認してください。

このコラムでわかること
  1. 資本金とは何か
  2. 1円起業の落とし穴
  3. 税務上の分岐点
  4. 適正額の考え方
  5. 増資・減資は後からできるか
  6. よくある質問
  7. 必要額から決めて、1,000万円は超えない

資本金とは何か

資本金は、出資者が会社に払い込んだ資金です。費用ではなく、会社の財産なので、設立後は事業に使えます

つまり、「資本金300万円」は、300万円が会社の口座にあり、それを事業に使えるという意味です。払って消えるお金ではありません

登録免許税は資本金の0.7%(最低額あり)なので、資本金が大きいほど設立時の登録免許税は増えます(法人設立の費用内訳)。

POINT

資本金は使えるお金であり、外から見える数字でもある。だから「いくら必要か」と「いくらに見せるか」の両方で考える。

1円起業の落とし穴

①法人口座の審査資本金が極端に少ないと、事業実態の乏しさと見なされることがあります(法人口座の審査に落ちる理由)。

②取引先の与信登記事項証明書で資本金は誰でも確認できます。BtoBでは、与信の判断材料として見られることがあります。

③融資審査。資本金が自己資金の一部と見なされる場面があり、極端に少ないと計画の裏づけが弱くなります創業融資の自己資金)。

④許認可の要件建設業(一般建設業では500万円以上の資金要件)、人材派遣、旅行業など、財産的基礎の要件がある業種があります。該当する業種なら、要件を満たす額が必須です。

⑤運転資金が足りない。資本金1円なら、設立直後に会社に現金がない状態。役員からの借入で回すことになり、経理が煩雑になります。

税務上の分岐点

①資本金1,000万円未満: 設立から一定期間、消費税の免税事業者になれる場合があります(要件あり)。1,000万円以上だと、初年度から課税事業者

②資本金1,000万円以下: 法人住民税の均等割の区分が低くなります(法人の維持費は年間いくらか)。

③資本金1億円以下: 中小企業向けの税制優遇(軽減税率、交際費の損金算入の特例など)の対象。

実務的には、①のため「999万円以下」に設定するケースが多い1,000万円ちょうどにする理由は、通常ありません

なお、インボイス制度により免税事業者のメリットは状況によって変わります個人事業主はインボイス登録すべきかの考え方が法人にも関係します)。

適正額の考え方

必要な手取りはライフプラン逆算から逆算できます。

基本の計算: 設立から3〜6ヶ月分の運転資金+初期投資起業資金はいくら必要か運転資金は何ヶ月分必要か)。

業種別の目安(あくまで参考): - 受託・コンサル・制作(在庫・設備なし): 50〜300万円 - 小売・EC(在庫あり): 100〜500万円 - 飲食・店舗: 300万円〜カフェ開業の資金) - 許認可業種: 要件を満たす額

融資を受ける場合、資本金=自己資金の一部という見方をされます。融資額との合計で、必要資金をまかなえる設計にしてください。

増資・減資は後からできるか

増資は可能です。登記が必要で、登録免許税がかかります。

減資も可能ですが、債権者保護手続き(官報公告など)が必要で、手間と費用がかかります。

だから、最初から大きくしすぎないほうが安全です。足りなければ増資、多すぎると減らすのが面倒——この非対称性を覚えておいてください。

よくある質問

Q. 資本金は使ってしまっていいですか?

使えます。事業のための資金なので、設備や仕入れに充ててください。

Q. 見せ金は問題になりますか?

一時的に借りて払い込み、直後に引き出す行為は問題になり得ます。払込みの実態がないと判断されると、法的な問題になります。

Q. 個人事業から法人化する場合は?

事業に必要な運転資金を基準に。個人事業の資産を現物出資する方法もありますが、手続きが複雑になります。

Q. 資本金が少ないと取引を断られますか?

業種と取引先によります。BtoCではほぼ影響せず、大手とのBtoBでは確認されることがあります

必要額から決めて、1,000万円は超えない

資本金は、事業に必要な運転資金と初期投資から決めるのが基本です。そこに、許認可の要件と、消費税の分岐(1,000万円未満)を重ねる。1円は制度上可能でも、口座開設や与信で不利になる——この現実を踏まえて設定してください。

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