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起業に失敗したらどうなるか。再就職と再起業のリアル

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者

起業を検討している人が、いちばん知りたいのに、いちばん語られないのが「失敗したらどうなるのか」です。成功譚は溢れているのに、失敗の実務は表に出てきません。

結論から言うと、起業の失敗で決定的な差を生むのは、事業が失敗したことそのものではなく、借入の保証形態です。代表者保証のない借入なら法人の清算で完結し、保証があれば個人に及ぶ。そしてもうひとつ、経営経験は再就職市場で必ずしもマイナスではありません。この記事では、実際に何が起きるのかを順に整理します。

このコラムでわかること
  1. 何が起きるかは、保証の形で決まる
  2. 事業をたたむ手順
  3. 再就職市場では、どう見られるか
  4. 生活はどうなるか
  5. 再起業までの距離
  6. よくある質問
  7. 失敗の想定は、始めるための準備

何が起きるかは、保証の形で決まる

まず、いちばん重要な分岐です。

個人事業の場合、事業の負債はそのまま個人の負債です。事業と個人の財布に法的な区別がありません。

法人の場合、原則として株主・社員の責任は出資額まで(有限責任)。ただし創業期の融資では代表者保証が付くことが多く、その場合は法人が返せなくなれば代表者個人が返済義務を負います。近年は「経営者保証に関するガイドライン」により、一定の要件を満たせば保証なしの融資や、保証履行時に一定の資産を手元に残す運用も広がっています[要確認: 現行の運用範囲]。

だから、借りる時点で確認すべきは金利より先に保証の形です。保証があるかないか、あるならどの範囲か。ここを曖昧にしたまま借りると、失敗したときの着地点が読めません(公庫の創業融資制度融資)。

事業をたたむ手順

「失敗=倒産」ではありません。債務を清算できる状態でやめれば、それは廃業であって倒産ではない廃業率の実際)。

個人事業なら、廃業届と、必要なら青色申告の取りやめ届。法人なら、解散決議 → 清算人の選任 → 債権者への公告 → 残余財産の分配 → 清算結了の登記。解散のほうが設立より手間と費用がかかります

支払いが回らない見込みが立った段階でやるべきは、隠さず早く相談することです。金融機関への返済猶予(リスケジュール)の相談は、延滞してからより前のほうが選択肢が広い。取引先への支払いも、遅れる前に連絡したほうが関係が残ります。行き詰まった場合の法的整理(任意整理・民事再生・破産)は、弁護士と早い段階で相談してください。手遅れになる原因のほとんどは、相談が遅いことです。

POINT

失敗したときの傷の深さを決めるのは、事業の悪さではなく判断の遅さ。撤退ラインを先に決めておけば、選べる出口が残る。

再就職市場では、どう見られるか

ここは実態を正確に言うべき部分です。「経営経験があるから優遇される」も「起業経験は不利」も、どちらも一般化できません。見られ方は職種で分かれます。

プラスに働きやすいのは、事業開発・営業責任者・新規事業・経営企画・スタートアップの管理部門。自分で数字を作った経験は、そのまま職務経歴になります。売上をいくらから いくらにしたか、何人を雇い、いくらの資金を調達したか——数字で語れる人は強い。

慎重に見られるのは、大企業の定型的な職種。「またすぐ辞めて独立するのでは」という懸念は実際にあります。ここは次に何をしたいのかを具体的に語れるかで印象が変わります。

職務経歴書では、失敗を隠すより、何を学んだかを数字と一緒に書くほうが通ります(職務経歴書の書き方)。転職回数や空白期間の扱いは転職回数が多い場合ブランク期間の書き方も参考になります。

生活はどうなるか

現実的な影響を並べます。信用情報: 延滞や債務整理があれば記録が残り、一定期間はローンやカードの審査に影響します。税・社会保険: 事業をやめても、前年所得ベースの住民税と国保の請求は続きます。ここを見落として詰むケースが多い。家族: 生活防衛資金を事業と分けていたかどうかで、この局面の余裕がまったく変わります(起業前の貯金はいくら必要か)。

逆に言えば、この3つに備えておけば、失敗しても生活は続きます。備えの中身は起業前にしか作れません。

再起業までの距離

再挑戦は可能です。ただし条件があります。債務の整理が終わっていること前回の失敗を構造で説明できること(運が悪かった、ではなく、固定費が重すぎた・入金サイトを読み違えた等)、そして自己資金を積み直していること

融資審査でも、前回の失敗そのものより「同じ失敗を繰り返さない設計になっているか」が見られます。一度やった人の二度目は、経験の分だけ計画の精度が上がる——これは実際にそうです。

よくある質問

Q. 自己破産したら二度と事業はできませんか?

法的に事業を営めなくなるわけではありません。ただし一定期間は融資や信用取引に影響します。個別の影響は弁護士に確認してください。

Q. 失敗した経歴は、履歴書に書かないといけませんか?

事業を営んでいた期間は経歴として書くのが基本です。空白にするより、事業として書いたほうが説明がつきます

Q. 撤退の判断はどう決めればいいですか?

始める前に決めます。「12ヶ月やって月○万円に届かなければ撤退」のように、期間と金額で先に決めておく。走り出してから決めると、判断が遅れます。

Q. 家族に迷惑をかけないためには?

生活防衛資金を事業と分ける、保証の範囲を共有する、撤退ラインを共有する。この3つです(起業に家族が反対するとき)。

Q. 失敗した人はどのくらいいるのでしょうか?

法人番号データからは廃業を正確に追えません(登記記録の閉鎖まで時間がかかるため)。分かるのは新設側で、福岡市では2016年の2,468社から2025年の3,577社へ約45%増えています(福岡市 会社設立データ)。増えているのは挑戦する人の数であって成功率ではないので、この数字を根拠に「うまくいきやすい」と読まないでください。生活費の下限はライフプランで先に出しておくのが、失敗の想定として最も実用的です。

失敗の想定は、始めるための準備

失敗したときの絵を描くのは、後ろ向きな作業ではありません。出口が見えているから、思い切って踏み込める。撤退ラインと保証の範囲と生活防衛資金——この3つが決まっていれば、起業は「戻れない賭け」ではなく「期限つきの挑戦」になります。

自分の場合、どこまでのリスクを取ることになるのか。福岡で会社を経営し、事業の出口も経験した立場から、無料で相談に乗ります。始める前の段階でこそ、話す価値があります。

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