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残業が多くて辞めたい。月何時間から転職を考えるべきか

寺木 健人
監修:寺木 健人転職・キャリア担当・人材業界出身

「残業が多くて辞めたい」。この悩みには、他の転職理由にはない特徴があります。数字で測れることです。感情の問題である前に、時間の問題であり、そして法律の問題でもあります。

結論から言うと、判断の目安になるラインは存在します。月45時間を常態的に超えているなら見直しの検討開始、月80時間前後が続いているなら健康リスクの領域、100時間規模なら判断の問題ではなく離脱の問題です。この記事では、このラインの意味と、数字に表れない「質」の見方、社内でできる対処、転職に動く場合の注意点を順に整理します。

このコラムでわかること
  1. 法律上のライン——45時間・80時間・100時間
  2. 数字より効く「質」——同じ60時間でも消耗が違う
  3. 社内でできる3つの対処
  4. 転職で「残業の少ない会社」を見抜く
  5. よくある質問
  6. 「残業に強い自分になる」は解決策ではない

法律上のライン——45時間・80時間・100時間

まず、客観的な物差しから。労働基準法の三六協定では、時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間です。特別条項があっても、月100時間未満、複数月平均80時間以内という上限が法律で定められています。そして月80時間前後の時間外労働は、健康障害リスクが高まる水準として、労災認定の基準(いわゆる過労死ライン)にも使われる数字です。

自分の残業を測るときの注意点が2つあります。第一に、サービス残業・持ち帰り・始業前を含めて数えること。給与明細の残業時間ではなく、実際に仕事に使っている時間で測ってください。第二に、平均ではなく継続で見ること。繁忙期に一時的に増えるのと、毎月恒常的に超えているのとでは、意味がまったく違います。

月45時間超が常態で、それが業務の構造(人員不足・仕事量)に起因しているなら、それは繁忙ではなく恒常です。恒常なら、個人の頑張りでは解決しません。

数字より効く「質」——同じ60時間でも消耗が違う

一方で、残業は時間数だけでは測りきれません。同じ月60時間でも、消耗の度合いは質によってまるで違います。

消耗が小さい残業は、裁量がある残業です。自分でコントロールできる仕事を、納得して、成長の実感とともにやっている。消耗が大きい残業は、裁量のない残業です。非効率な会議や誰も読まない資料のための時間、上司が帰らないから帰れない待機、突発対応での深夜呼び出し。時間数が同じでも、後者は心身を数倍削ります。

だから判断には2軸を使ってください。時間数(45/80/100のライン)と、裁量の有無。時間は少なくても裁量ゼロの残業が続いているなら消耗は蓄積しますし、逆に時間が多くても裁量と納得がある時期は、キャリアの投資期として成立することもあります。ただし80時間超の常態化だけは、裁量があっても正当化しないでください。健康は納得ではカバーできません。

社内でできる3つの対処

転職を考える前に、社内で打てる手を確かめます。打てる手を打った経験は、転職活動でもプラスに働きます。

第一に、記録と可視化。実労働時間を1ヶ月記録し、上司との面談で「業務量と時間の実態」として見せる。感覚の訴えは流されますが、記録は流されにくい。第二に、業務の棚卸し交渉。全部を頑張るのではなく、「この業務をやめる・減らす・移すなら、どれですか」と優先順位の判断を上司に返す。残業の恒常化は、多くの場合、優先順位の判断を現場に丸投げされていることが原因です。第三に、制度の利用。会社に相談窓口・産業医面談(長時間労働者への面談指導)があれば使う。月80時間超は、産業医面談の対象になり得る水準です。

これらが機能しない会社——記録を見せても「みんな頑張っている」で終わる、人を増やす気がない——なら、それは構造として変えられないものです。判断の軸はこちらの記事の通り、変えられないものが理由の中心なら、環境を変えるのは合理的な選択です。

POINT

残業の判断は「時間数」と「裁量の有無」の2軸で。80時間超の常態化だけは、どんな納得があっても正当化しない。

転職で「残業の少ない会社」を見抜く

残業起点で転職する場合の最大のリスクは、次の会社も同じだったという再発です。求人票の「残業月平均20時間」は全社平均であることが多く、配属部署の実態とは別物です。見抜く方法をいくつか挙げます。

面接で「配属予定チームの、先月の平均退勤時刻」を聞く。平均残業時間より答えにくく、答えの具体性で実態が透けます。オフィスの夜の灯りを見る、退勤時間帯のビルの人の流れを見るという古典的な方法も、堅実に機能します。また、福岡の残業実態データのように業種別の傾向を先に頭に入れておくと、「その業種にしては多い/少ない」という比較ができます。業種によって残業の相場自体が違うため、会社選びの前に業種の選び直しが効くケースもあります。

年収と残業の関係にも注意してください。残業代で年収が膨らんでいる場合、残業の少ない会社への転職は額面ダウンに見えます。比べるべきは時給換算です。年収500万円で月80時間残業と、年収450万円で月10時間残業。時給で割れば、後者が上です。

よくある質問

Q. 自分の残業は多いほうですか?

福岡県の平均残業は月12時間(所定内165時間、年換算144時間)です。ただし業種差が大きく、月30時間の業種から5時間の業種まであります(残業の実態)。全体平均ではなく、自分の業種の水準と比べてください。

Q. 残業代が出ていれば我慢すべきですか?

金額ではなく時間あたりで比べてください。残業代込みの年収が高く見えても、労働時間で割ると水準が下がっていることがあります。同じ年収でも残業が月20時間違えば、時間あたりでは1割以上変わります。

Q. 残業の少ない会社は年収も低いですか?

必ずしもそうではありません。福岡の業種別平均で見ると、残業が多い業種が年収でも上位とは限らず、業種による差のほうが大きく出ます(業種別年収)。「残業を減らすと年収が下がる」は、業種を変えない前提での話です。

Q. 転職先の残業時間は事前に分かりますか?

求人票の記載だけでは分かりません。確認できるのは、みなし残業の有無と時間数、36協定の特別条項、そして面接で聞く「繁忙期の実態」です。数字が出てこない、または即答されない場合は、その時点が判断材料になります。

「残業に強い自分になる」は解決策ではない

最後に、ひとつだけ。長時間労働の環境に長くいると、「自分の要領が悪いからだ」「もっと効率化すれば」と、原因を自分に置く思考が始まります。効率化の努力自体は良いことですが、構造的な業務過多は個人の効率化では吸収できません。効率化した分だけ仕事が増える職場なら、それは効率の問題ではなく構造の問題です。

月に何時間働いていて、そのうち裁量のある時間はどれくらいか。まず数字にしてみてください。数字にした結果を持って、社内で交渉するか、環境を変えるか。その判断を一緒に整理したければ、無料のキャリア相談でどうぞ。体のサインが出ている場合は、相談より受診が先です。

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