← コラム一覧

創業融資の面談で聞かれること。準備すべき回答の作り方

久保 塁
監修:久保 塁起業・独立担当・現役経営者

書類を出し終えると、次は面談です。「何を聞かれるのか分からない」「詰められたらどうしよう」と身構える人が多いのですが、創業融資の面談は落とすための場ではありません。

結論から言うと、面談で確認されているのは計画書に書いた数字が、本人の中で腹落ちしているかどうかです。だから準備すべきは模範解答の暗記ではなく、自分の数字の根拠を自分の言葉で言えるようにしておくこと。この記事では、実際に聞かれる質問の型を5つに分け、答え方の原則と、心証を損ねる受け答えを整理します。

このコラムでわかること
  1. 面談は「計画書の答え合わせ」
  2. 聞かれる質問の5つの型
  3. 心証を損ねる受け答え
  4. 当日までにやっておくこと
  5. よくある質問
  6. 準備は「話す練習」ではなく「数字の分解」

面談は「計画書の答え合わせ」

面談の前提を押さえておきます。担当者の手元には、あなたが出した創業計画書と自己資金の通帳があります。面談はそこに書かれた内容を、本人の口から確認する場です。

つまり、新しい情報を聞き出そうとしているのではなく、書かれた情報と本人が一致しているかを見ている。ここが分かると準備の方向が定まります。計画書に書いていないことを話す必要はなく、書いたことを説明できればいい。逆に、計画書の数字を本人が説明できないと——たとえば士業に作ってもらった書類をそのまま出した場合——それだけで大きく心証を損ねます。

所要時間はおおむね1時間前後。服装は事業の性格に合っていれば十分で、スーツ必須ではありません。

聞かれる質問の5つの型

質問は、ほぼ次の5系統に分類できます。

①経歴と動機。「これまで何をしてきたか」「なぜこの事業か」「なぜ今か」。ここで見られているのは熱意ではなく、開業する事業と経験の接続です。飲食なら飲食での年数、制作なら制作の実務。「未経験だが情熱がある」は、審査上はほぼ加点になりません。経験が薄い分野なら、それを補う仕組み(共同創業者・仕入れ先・すでにある受注)を説明します。

②売上の根拠。「この売上はどう計算しましたか」。もっとも重要な質問です。客単価×客数×稼働日、あるいは単価×件数。分解された式で答えられるかどうかがすべてです。「同業がこのくらいなので」では弱い。自分の商圏、自分の席数、自分の稼働時間から積み上げてください。

③自己資金。「この資金はどうやって貯めましたか」。通帳を見ながら聞かれます。詳しくは創業融資の自己資金にまとめました。直前の大口入金があれば必ず経緯を聞かれるので、正直に説明できるようにしておきます。

④資金使途と返済。「借りたお金を何に使いますか」「毎月いくら返せますか」。見積書と一致していることが前提です。返済原資は「利益+減価償却」から説明します。

⑤リスクへの備え。「計画どおりにいかなかったらどうしますか」。これは落とすための意地悪ではなく、最悪ケースを想定しているかの確認です。「頑張ります」は答えになりません。売上が計画の7割だった場合の月次収支、その状態で何ヶ月耐えられるか、そこまでに打つ手は何か。ここを答えられる人は多くないので、差がつきます。

POINT

面談で強いのは、うまく話す人ではなく「数字が分解できている人」。売上を式で言えるか、7割の月に何が起きるか言えるか——準備はこの2点に集約される。

心証を損ねる受け答え

逆に、避けたい答え方も明確です。

根拠のない強気。「初月から満席想定」「SNSでバズらせます」。計画の信頼度をまとめて下げます。保守的な数字のほうが、審査では評価されます

他人任せの説明。「そこは税理士に任せているので」。作成を手伝ってもらうのは問題ありませんが、中身を説明できないのは別問題です。

資金使途の曖昧さ。「とりあえず運転資金として」。見積もりが無い借入は使途違反のリスクと見なされます。

生活費の見落とし。事業計画は黒字なのに、家計の生活費が計上されていない——これは非常に多い。起業前の貯金と生活防衛資金で書いたとおり、生活費は事業計画とは別枠で確保しておく必要があります。

当日までにやっておくこと

準備は3つで足ります。

計画書を音読して、数字に詰まらないか確認する。詰まった箇所が、面談で聞かれる箇所です。

売上の式を1枚にまとめる。客単価・客数・稼働日、あるいは単価・件数・リピート率。手元に置いて構いません。

根拠資料を揃える。見積書、物件資料、仕入先の見積、すでにある受注のメールや契約書。実売の証拠は、どんな説明よりも強い。副業で数件でも受注していれば、それを持っていってください。

福岡では、公庫の窓口のほか市の創業支援窓口や商工会議所で事前の壁打ちができます(福岡の創業支援制度)。面談の前に一度、第三者に計画を説明してみることを勧めます。説明できない箇所が必ず見つかります。

よくある質問

Q. 緊張して話せる自信がありません。不利になりますか?

話し方の巧拙は評価対象ではありません。詰まったら「少しお待ちください」と言って資料を見て構いません。資料を見ながら正確に答えるほうが、暗記して滑らかに間違えるよりも確実です

Q. 面談は何回ありますか?

通常は1回です。追加の資料や確認事項があれば、電話やメールでのやり取りが発生することがあります。

Q. 家族の協力状況も聞かれますか?

聞かれることがあります。生活の安定は返済の安定に直結するためです。独立したい会社員がまずやることでも触れたとおり、家族の合意を先に作っておくほうが、面談以前に事業そのものが続きます。

Q. 落ちた場合、理由は教えてもらえますか?

明確な理由は通常開示されません。推定して立て直すことになります。考え方は創業融資を断られたときの再申込戦略にまとめました。

準備は「話す練習」ではなく「数字の分解」

面談対策というと想定問答の暗記に向かいがちですが、実際に効くのは数字の分解です。売上を式にする、費用を項目に割る、最悪ケースを月次で描く。この3つができていれば、質問の順番が変わっても答えられます。

自分の計画で、どこが突かれそうか。福岡で実際に創業した経営者に無料で相談できます。計画書を持ってきてもらえれば、面談で聞かれる箇所を一緒に洗い出します。

NEXT READ起業・独立運転資金は何ヶ月分必要か。資金ショートの典型パターン起業・独立創業融資を断られた。理由の推定と再申込までの立て直し方起業・独立女性の小さな起業。生活と両立するスモールビジネス設計