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パワハラをどこに相談するか。社内・労基署・弁護士の使い分け

寺木 健人
監修:寺木 健人転職・キャリア担当・人材業界出身

「これはパワハラなのだろうか」と迷っているうちに、月日が経ってしまう。相談したところで何も変わらないのではないか、逆に立場が悪くなるのではないか——そう考えて動けない人はとても多い。

結論から言うと、相談先は複数あり、それぞれ「できること」が違います。社内窓口は事実調査と是正、労働局は助言とあっせん、労基署は法令違反の監督、弁護士は請求と交渉。目的に合わない窓口に行くと「対応できない」と言われて終わり、そこで諦めてしまう。この記事では、定義・証拠・窓口の使い分けを整理します。

このコラムでわかること
  1. 法律上の定義と6類型
  2. 相談の前に、証拠を整える
  3. 窓口の使い分け
  4. 転職活動と並行させる
  5. よくある質問
  6. 相談は、辞めるためではなく選ぶため

法律上の定義と6類型

職場のパワーハラスメントは、法令上おおむね次の3要素で定義されています。①優越的な関係を背景とした言動②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの③労働者の就業環境が害されるもの。この3つを満たすものが該当します。

厚生労働省が示す代表的な6類型は、①身体的な攻撃 ②精神的な攻撃(人格否定、他の従業員の前での威圧的な叱責など)③人間関係からの切り離し(隔離、無視)④過大な要求(明らかに遂行不可能な業務の強制)⑤過小な要求(能力とかけ離れた程度の低い仕事を命じる)⑥個の侵害(私的なことへの過度な立ち入り)。

重要なのは、業務上の適正な指導は含まれないという点です。厳しい指摘であっても、業務上必要で相当な範囲なら該当しません。逆に、穏やかな口調でも③⑤に当たる行為はハラスメントになり得ます。「怒鳴られていないから違う」は誤解です。

相談の前に、証拠を整える

どの窓口でも最初に聞かれるのは事実関係です。記録があるかないかで、話の進み方がまったく変わります。

残すべきは、日時・場所・同席者・具体的な言動・自分の対応・体調への影響。メール、チャット、指示書は保存する。ただし会社の機密情報を持ち出すと別の問題になるため、自分に向けられた言動の記録に限定してください。

体調に影響が出ている場合、医療機関の受診記録は客観的な資料になります。受診は治療のためが第一ですが、結果として記録も残ります。

記録の作り方の実務は理不尽な上司に耐えられないに詳しく書きました。

POINT

どの窓口も、動くための材料は「事実」。感情の強さではなく、いつ・誰が・何をしたかで判断される。だから記録が最強の準備になる。

窓口の使い分け

①社内の相談窓口・人事。事業主にはハラスメント防止の措置義務があり、相談窓口の設置と適切な対応が求められます。できること: 事実調査、加害者への処分、配置転換。向く場面: 会社としての是正を求めたいとき。注意: 相談を理由とする不利益取扱いは法律上禁止されています。

②都道府県労働局(総合労働相談コーナー)。無料・匿名でも相談可能。できること: 助言・指導、あっせん(第三者を交えた話し合い)。向く場面: 社内で解決しない、社内に相談しづらいとき。福岡県にも設置されています[要確認: 最新の設置窓口]。

③労働基準監督署できること: 労働基準法違反(未払い残業、違法な長時間労働、安全配慮)の監督。向く場面: 法令違反が絡むとき。注意: パワハラ「そのもの」は労基法違反ではないため、労基署の管轄外になることがあります。ここで断られて諦める人が多いのですが、その場合の行き先は②か④です。

④弁護士できること: 損害賠償請求、労働審判、訴訟、退職交渉。向く場面: 金銭的な請求や、法的手続きを視野に入れるとき。法テラスの無料相談などの制度もあります。

⑤労働組合・社外のユニオン。会社との団体交渉が可能。個人加盟できる組合もあります。

転職活動と並行させる

現実的な話として、相談と並行して転職の準備を進めるのは合理的です。理由は2つ。ひとつ、解決には時間がかかり、その間の消耗を減らす必要があるから。ふたつ、「いつでも出られる」という状態そのものが、交渉上の余裕になるから。

在職のまま活動するのが原則です(在職中の転職活動)。面接での退職理由の説明は、事実と自分が取った対処をセットで話すと伝わります(転職理由の伝え方)。

体調に影響が出ているなら、転職活動より先に受診と休養です。判断力が落ちた状態での転職は、条件を見誤ります燃え尽き症候群かもしれないとき)。

よくある質問

Q. 業務上の指導との線引きが分かりません。

目安は「業務上の必要性」と「手段の相当性」です。指摘の内容が業務に関することでも、人格を否定する言い方、他の人の前での見せしめ、繰り返しの威圧は相当性を欠くと判断され得ます。判断に迷うなら、②の労働局で相談してください。

Q. 匿名で相談できますか?

労働局の総合労働相談コーナーは匿名での相談が可能です。ただし、具体的な是正を求める段階では、事実関係の特定が必要になります。

Q. 相談したら会社に居づらくなりませんか?

相談を理由とする不利益取扱いは禁止されていますが、実際の空気は会社によります。だからこそ、社外窓口という選択肢を先に知っておくことに意味があります。

Q. 証拠が何もありません。

いまから作れます。記録は「気づいた日から」で構いませんし、同僚の証言や体調の記録も材料になります。証拠がないから相談できない、ということはありません

相談は、辞めるためではなく選ぶため

相談窓口に行くと決めた時点で、状況は「耐えるか辞めるか」の二択ではなくなります。是正を求める、異動を求める、金銭的な請求をする、条件を整えて辞める——選択肢が増えることが、相談のいちばんの効用です。

自分の状況ならどの窓口が合いそうか、転職と並行させるならどう進めるか。転職ありきではない立場で、無料で相談に乗ります。

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